2045年の自動車部品市場見通し、コンプレッサーは電動化で大きく明暗:電動化
富士キメラ総研は2022年12月27日、自動車部品の市場調査結果を発表した。自動車部品34品目のグローバル市場は、2045年に2021年比59.3%増となる38兆7773億円に拡大すると見込む。
富士キメラ総研は2022年12月27日、自動車部品の市場調査結果を発表した。自動車部品34品目のグローバル市場は、2045年に2021年比59.3%増となる38兆7773億円に拡大すると見込む。
自動車部品の動向に影響を与える「電動化」「軽量化とカーボンニュートラル」「自動運転」「快適性や意匠性の向上」の4点に着目し、2045年までに市場予測をまとめた。
電動化によって伸長する品目は多い。ただ、電動車の冷却方式の設計の影響を受けて、冷却ファンなどは長期的に縮小すると予想する。また、電動車の走行距離延長や車室内のスペース確保のため、部品の小型化や軽量化が一層進む。内燃機関向けの部品は電動化に伴って減少が見込まれるが、電動パワートレイン向けに応用や転換を進めることで今後も採用されていく可能性があるとしている。
電動化の影響によって明暗が分かれるのは、エアコン用コンプレッサーだ。エンジン車向けの機械式コンプレッサーは、電動化の進展によって需要が減少し、2045年には2021年比97.6%減の129億円に縮小すると見込む。一方で、電動コンプレッサーは同10.4倍の2兆3282億円に拡大する予想だ。電動車はエンジンの排熱を暖房に使用できないためヒートポンプとして需要が増加する他、電池や電子部品の効率を維持するための冷却も求められている。
軽量化に関しては、ドアや内装部品など開発の余地が大きい品目で伸びる。燃費向上や走行距離延長のニーズに応えるため高価格な軽量材料の利用が拡大し、短期的には市場の成長が見込まれる。
自動運転に関しては、センサーや通信機器の搭載数増加で多くの品目が長期的に成長するとしている。センサーを搭載する位置や搭載方法の工夫、自動車部品とセンサーの一体化など、高機能化が進展するとしている。
フロントのミリ波レーダーの内蔵に対応したエンブレムは、2045年に2021年比3.0倍に拡大すると予測している。日本や欧州での衝突被害軽減ブレーキの搭載義務化、ADAS(先進運転支援システム)や自動運転システムの高機能化が追い風となってミリ波レーダーの搭載が拡大し、エンブレムもミリ波レーダー内蔵の需要が高まる。
現在はLEDを搭載したミリ波レーダー対応エンブレムの開発が進められており、先進的なデザインの実現にも寄与すると見込まれる。また、希少金属のインジウムを用いた電磁波透過膜の成膜はコストや歩留まりに課題があるため、塗料を使った成膜技術が開発されている。
快適性や意匠性の向上をけん引するのはEV(電気自動車)で、EVならではの先進的なデザインの実現を目指すことが需要を後押しする。さらに、自動運転の高度化に伴って車室内の過ごし方が変化する中で、より付加価値の高い製品の需要が高まるとみている。
快適性に関連して、制振材の市場規模は2045年に2021年比42.6%増の2668億円に拡大すると見込む。動力源がエンジンからモーターになり、エンジン音でかき消されていたノイズが目立つことから、電動車の普及拡大に伴って制振材の需要も増加するとしている。自動運転中の車内で映画鑑賞やリモート会議などを行うなどの過ごし方が広がると、静粛性向上に対するニーズが一層高まると予想する。ただ、制振性を高めることと軽量化は相反するため、両方を満たす技術の開発が進んでいる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 電動コンプレッサー1000万台を前倒し、豊田自動織機が900億円の設備投資
豊田自動織機は、2023年度までに900億円の設備投資を実施し、電動コンプレッサーの年間生産台数をグローバルで1000万台に引き上げる。東浦工場(愛知県東浦町)や中国子会社のTACK(豊田工業電装空調圧縮機(昆山))の加工ラインの拡張や、刈谷工場(愛知県刈谷市)の組み立てラインでのサイクルタイム短縮で能力を増強する。 - ミリ波レーダー対応の自動車エンブレムに新しい成膜技術、製造コストを半減
JCUと島津製作所、きもとの3社は、ミリ波レーダーを搭載する自動車のエンブレム向けに、コストを半減する電磁波透過膜の成膜技術を開発した。 - デンソーが今後10年で10兆円を投資する「5つの流れ」
デンソーは2022年12月15日、オンラインで事業説明会を開き、2035年に向けた取り組みを発表した。「人流」「物流」「エネルギーの流れ」「資源の流れ」「データの流れ」の5つを網羅し、循環型社会の実現に向けた技術開発を進める。これらの領域に今後10年間で10兆円規模の投資を実施する。 - ジヤトコが電動パワトレの実験拠点を新設、日産の電動化戦略の一環で
日産自動車とジヤトコは2022年12月21日、電動車の需要拡大に対応するために電動パワートレインの開発体制を強化すると発表した。 - 日産は半固体ではなく「全固体」電池、懸念される低寿命をNASAや大学と克服
日産自動車は2022年4月8日、2028年度の実用化を目指す全固体電池の開発状況を発表した。 - ルノーがCASE対応で新たな動き、EV、ソフトウェア、その他パワトレは新会社に
ルノーグループは2022年11月8日、投資家向けに説明会を開き、営業利益率を2025年に8%以上、2030年までに10%以上に高める事業計画を発表した。 - マツダが電動化加速で1.5兆円投資、中国地方のサプライヤーとも協力強化
マツダは2022年11月22日、2030年に向けた経営方針を発表した。2030年までを3つのフェーズに分けて電動化を推進する。2030年時点でのEV(電気自動車)比率は幅を持たせて25〜40%と想定する。電動化領域全体で1.5兆円を投資する計画だ。