「そもそも・すじ・べき論」の日本人 vs. 「使えれば問題ない」の中国人:リモート時代の中国モノづくり、品質不良をどう回避する?(8)(4/4 ページ)
中国ビジネスにおける筆者の実体験を交えながら、中国企業や中国人とやりとりする際に知っておきたいトラブル回避策を紹介する連載。第8回は「そもそも・すじ・べき論」で依頼をしようとする日本人と、「使えれば問題ない」と考える中国人の違いについて実際のエピソードを交えて解説する。
モノづくりにおける「そもそも・すじ・べき論」の弊害
日本は、「やってよいことをする」国民性である。一方、中国は「やってはいけないこと以外をする」国民性である。
すると、図5のように「やってはいけないこと以外をする」方が、することの数(色の付いた範囲)が圧倒的に多いことが分かる。昨今の中国で、斬新な発想による新しいモノやサービスがどんどん市場に出ていく理由の多くはここにあるように思う。
筆者が中国に駐在していたころ、多くの中国人が乗る電動バイクが日本人の間でとても人気であった。いわゆる50ccの原付バイクのようなものが、家庭のコンセントの充電で走るのだ。免許は不要で、価格は現在で2000〜3000人民元程度、最高時速は60kmくらいしか出ないがとても便利である。駐在している日系企業の日本人の多くは、事故対応が困難であるため使用禁止になっていたが、「なぜこれが日本に普及していないのか?」が疑問であった。
日本では電動バイクの普及が遅れている。その理由の1つは、国が定めた電動バイクの出力規制にあるらしい。日本は、中国や欧州で認められている出力よりも規制が厳しいこともあり、それが普及を妨げる要因の1つになっているのだ。現実に中国や他のアジアの国々では電動バイクが普及し、問題なく走っているのに、なぜ日本で同じようにできないのか、筆者には理解できない。筆者としては、それが「そもそも・すじ・べき論」から脱することができない日本人の特性によるものだと思っている。
中国人と一緒に仕事をすると、日本人の「やってよいこと」、つまり「そもそも・すじ・べき論」の領域に、中国人が「使えれば問題ない」と攻め込んでくる。
筆者は、理由のない「そもそも・すじ・べき論」にメリットはないと考える。もし、「そもそも・すじ・べき論」を言うならば、その理由の説明ができなければならない。前例にならえば大きな問題が起こることはなく、「やってよいことをする」国民性の日本人には安心できるのであろう。しかし、できることに制限を加え、自分で自分の首を絞めている場合もあることに気付くべきだ。理由の説明ができないなら、それは必要のない「そもそも・すじ・べき論」なのである。 (次回へ続く)
筆者プロフィール
オリジナル製品化/中国モノづくり支援
ロジカル・エンジニアリング 代表
小田淳(おだ あつし)
上智大学 機械工学科卒業。ソニーに29年間在籍し、モニターやプロジェクターの製品化設計を行う。最後は中国に駐在し、現地で部品と製品の製造を行う。「材料費が高くて売っても損する」「ユーザーに届いた製品が壊れていた」などのように、試作品はできたが販売できる製品ができないベンチャー企業が多くある。また、製品化はできたが、社内に設計・品質システムがなく、効率よく製品化できない企業もある。一方で、モノづくりの一流企業であっても、中国などの海外ではトラブルや不良品を多く発生させている現状がある。その原因は、中国人の国民性による仕事の仕方を理解せず、「あうんの呼吸」に頼った日本独特の仕事の仕方をそのまま中国に持ち込んでしまっているからである。日本の貿易輸出の85%を担う日本の製造業が世界のトップランナーであり続けるためには、これらのような現状を改善し世界で一目置かれる優れたエンジニアが必要であると考え、研修やコンサルティング、講演、執筆活動を行う。
◆ロジカル・エンジニアリング Webサイト ⇒ https://roji.global/
◆著書
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