「そもそも・すじ・べき論」の日本人 vs. 「使えれば問題ない」の中国人:リモート時代の中国モノづくり、品質不良をどう回避する?(8)(3/4 ページ)
中国ビジネスにおける筆者の実体験を交えながら、中国企業や中国人とやりとりする際に知っておきたいトラブル回避策を紹介する連載。第8回は「そもそも・すじ・べき論」で依頼をしようとする日本人と、「使えれば問題ない」と考える中国人の違いについて実際のエピソードを交えて解説する。
中国人の友人に聞いた「日本人の悪いところ」
筆者は以前、中国人の友人に「日本人の良いところと悪いところ」を質問したことがある。図4に、友人からの「WeChat」での返信をそのまま載せる。
前半の1)〜5)は、日本人の良いところである。ここでは、後半の1)〜5)を見てほしい。「融通が効かない」(「効」→「利」が正しい)と「硬いイメージ」は、まさに「そもそも・すじ・べき論」にこだわり過ぎということだ。「夢中になる時にコストパフォーマンスを考えない」は、意固地になって不必要なことをするという意味である。先述の「壁の穴」と「バリ」の話はこれに当てはまる。「頑固〜」と「潜入観」(「潜」→「先」が正しい)も「そもそも・すじ・べき論」そのものである。結局、全部同じことをいっているのだ。中国人にとって、日本人の「そもそも・すじ・べき論」はとても受け入れ難く、理解できないことを意味している。
日本人の「そもそも・すじ・べき論」を通すには、理由の説明が必要
日本人の「そもそも・すじ・べき論」が決して悪いわけではない。問題は、そこに理由の説明がないことだ。
以前、ある部品を部品メーカーで作ってもらったときのことだ。部品のある箇所に小さな傷があり、それはNGレベルであった。そのことを担当者に告げると、「この部品は、(最終)製品の裏側になり、ユーザーにはほとんど見えない。だからこの傷は問題ないレベルだ」と言うのであった。しかし、社内基準からもNGレベルであったため、筆者は次のように丁寧に説明することにした。
筆者 あなたは日本製品が好きですか?
担当者 はい、好きです。
筆者 それは品質が良いからですか?
担当者 はい、そうです。
筆者 私は今、あなたに日本製品の部品を作ってもらっています。日本製品は、製品の裏側でも傷のない必要があります。だから、この傷はNGレベルです。
担当者 分かりました、傷のないようにします。
このように説明したところ、担当者は納得して作業を続けてくれた。前述の「バリ」の話では、バリをなくす理由を筆者は説明できなかったのだ。だから若者は、金型修正の依頼を断ったのである。とてもリーズナブルだ。筆者がバリをなくす理由の説明ができないということは、バリをなくす必要がないということである。筆者は、理由なき「そもそもバリは小さくするのがすじ、金型修正するべき」にこだわっていただけであった。
日本人が「そもそも・すじ・べき論」で中国人に何かを依頼するのであれば、その依頼の理由をきちんと説明できなければならない。「(中国人が)お願いしたことをやってくれない」という困りごとをよく聞くが、それはお願いしたい内容の理由を説明できていないからだ。
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