積水化学がCCUの実証プラントを稼働、MIの開発効率も2〜10倍に向上へ:材料技術
積水化学工業が同社グループの製品・技術を通じた社会課題解決の取り組みについて説明。環境課題の解決に貢献する新技術として注力しているフィルム型ペロブスカイト太陽電池、バイオリファイナリー、CCU技術の開発進捗状況を報告した。
積水化学工業(以下、積水化学)は2022年11月10日、東京都内で会見を開き、同社グループの製品・技術を通じた社会課題解決の取り組みについて説明した。1947年3月の創立から75周年を迎えた同社は、コロナ禍やウクライナ情勢などで事業環境が悪化する中でも、2022年度の連結業績見通しが売上高1兆2760億円、営業利益1000億円となるなど好調に推移している。同社 代表取締役社長の加藤敬太氏は「事業体質強化に取り組んできた結果が出ており、2023年度からの次期中期経営計画へ向けて成長にシフトできる体制が整ってきた」と語る。
社会課題解決のうち環境課題への取り組みでは、2050年を目標に気候変動に対応する「GHG(温室効果ガス)排出ゼロの実現」、資源循環に対応する「サーキュラーエコノミーの実現」に取り組んでいる。2030年のGHG排出量(スコープ1+2)の削減目標については、電力の再エネ化に加え燃料由来GHG削減を前倒すことで、2019年度比で半減となる42万4000トンに更新した。「これはパリ協定で示された気温上昇を1.5℃に抑えるという目標に相当する」(加藤氏)という。
また、環境課題の解決に貢献する新技術として注力しているフィルム型ペロブスカイト太陽電池、バイオリファイナリー、CCU(Carbon Capture and Utilization)技術の開発進捗状況を報告した。
さまざまな場所への設置が可能なフィルム型ペロブスカイト太陽電池は、発電効率が15.0%に達し、屋外耐久性で10年相当を確認しており、30cm幅でのロールツーロールによる生産の要素技術も完成している。これからは2025年の事業化に向けた取り組みの段階に入り、NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)のグリーンイノベーション基金事業により1m幅の生産技術の開発を進めつつ、現行の30cm幅の製品を用いて2025年に全面開業するJR西日本のうめきた(大阪)駅への設置や施工を通して実証を図る。
ごみを分別することなくエタノールに変換できるバイオリファイナリーについては、岩手県久慈市に建設した10分の1スケールの実証プラントを2022年4月に稼働させるなど、研究開発から事業化の段階に入っている。事業ブランド「UNISON」を立ち上げ、資生堂や住友化学との連携も進めている。加藤氏は「2025年度の商用稼働を目指す」と意気込む。
空気中の酸素を用いずにCO2をCO(一酸化炭素)に転化するCCU技術は、鉄鋼大手のアルセロール・ミタル(ArcelorMittal)と共同で実証を進めており、2022年11月からスペインで小規模の実証プラントの稼働を始めた。2022年度中に安定動作させた上で、スケールアップを図っていく考えだ。「90%の転化率を誇り、世界のあらゆる産業で活用してもらえる」(加藤氏)。
これらの他、同社の研究開発を支える原動力になっているマテリアルズインフォマティクス(MI)についても、社外の協力を得て従来比で開発効率を2〜10倍に高める方針を示した。2022年8月に明治大学 金子研究室、同年9月に日立製作所との協業をそれぞれ発表している。加藤氏は「当社はMIについて国内でトップレベルの実力があると自負している。社外との協業によりこの高いレベルにあるMIをさらに進化させて、社会課題解決の武器としていきたい」と述べている。
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