積水化学がペロブスカイト太陽電池を2025年に事業化へ、資源循環でも大きな進展:脱炭素
積水化学工業が、同社グループの製品・技術を通じた社会課題解決の取り組みについて説明。経営方針「Vision 2030」においてESG経営を中核に置く同社は、戦略的な環境取り組みとして資源循環と脱炭素の両立を重視しており、その中で重要な役割を果たすバイオリファイナリーやペロブスカイト太陽電池、CCU技術などの開発進捗状況を紹介した。
積水化学工業(以下、積水化学)は2021年11月11日、オンラインで会見を開き、同社グループの製品・技術を通じた社会課題解決の取り組みについて説明した。2030年に売上高2兆円、営業利益率10%を目指す経営方針「Vision 2030」においてESG(環境、社会、ガバナンス)経営を中核に置く同社は、戦略的な環境取り組みとして資源循環と脱炭素の両立を重視しており、その中で重要な役割を果たすバイオリファイナリーやペロブスカイト太陽電池、CCU(Carbon Capture and Utilization)技術の開発進捗状況を紹介した。
バイオリファイナリーは、ごみを一切分別することなくガス化し、微生物によりエタノールに変換する技術で、積水化学は2014年から開発に取り組んできた。また、生産したエタノールによるポリエチレンなど石油化学製品の生成で住友化学と協力するなど、資源循環社会システム(サーキュラエコノミー)の構築を目指している。
これまでは商用プラントの1000分の1の規模で技術開発を進めてきたが、2022年からは岩手県久慈市に建設している商用プラントの10分の1規模のプラントによる実証を開始する計画だ。積水化学 社長の加藤敬太氏は「従来比で100倍の規模のプラントで実証を行うことで商用プラントへの移行が容易になる。ごみ処理場の老朽化が進む自治体などへのバイオリファイナリーの提案も並行して進める」と語る。
脱炭素戦略の一角を担うのがペロブスカイト太陽電池である。ペロブスカイト太陽電池は、一定の厚みを持つ結晶シリコン太陽電池とは異なり、薄型のフィルム形状かつ軽量、フレキシブルなことを特徴とし、工場の屋根やビルの壁面など従来は難しかった場所に設置できることで注目を集めている。
積水化学は30cm幅でのロールツーロール製造プロセスの構築を完了する一方で、他社に先駆けて屋外での実証実験を行うなど屋外耐久性の向上を優先した開発を進めており、既に屋外利用10年相当の耐久性を確認している。発電効率でも2021年7月に14.3%を達成。加藤氏は「今後実証などを経て2025年に事業化したい」と強調する。今後も、ロールツーロール製造を1m幅に広げ、屋外耐久性を15〜20年に伸ばし、発電効率で15%超を目指すなどの開発を進めていくという。
脱炭素戦略では、排出したCO2を回収して有効活用するCCU技術の開発も進展している。同社のCCU技術は、空気中の酸素を用いずにCO2をCO(一酸化炭素)に変化するケミカルルーピング反応を用いており、CO2転化率の目標は90%となっている。NEDO(新エネルギー・産業技術総合開発機構)の委託事業として、鉄鋼プロセスにCCU技術を活用する国際共同研究開発を鉄鋼大手のアルセロール・ミタル(ArcelorMittal)と2021年12月までにスタートさせる予定だ。
脱炭素関連では、2016年3月に事業化を発表した大容量フィルム型リチウムイオン電池を、同社 住宅カンパニーが展開する太陽光発電システムと大容量蓄電池を組み合わせた「新スマートパワーステーションFR GREENMODEL」に採用するなどして事業規模を拡大してる。一方、リチウムイオン電池の需要が拡大しているEV(電気自動車)など車載向けの展開については「まずは住宅向け大容量蓄電池で事業立ち上げを進めたい。車載向けについては、全固体電池などさまざまな候補が出てきていることも含めて可能性を見極めたい。参入する場合も、当社単独ではなく、適切なパートナーと共同して取り組むことになるだろう」(加藤氏)としている。
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