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人海戦術による仕分けから脱却、山善の物流拠点がAGVでスマート化物流のスマート化(2/2 ページ)

消費財と生産財を両翼で手掛ける専門商社の山善が、国内最大の物流拠点である「ロジス関東」に仕分けAGV「t-Sort」を導入した。人海戦術で行っていた商品仕分けをスマート化することで作業者を12人から5人に削減し、作業効率も約3倍に向上。導入期間も2日と極めて短かったことも特筆に値する。

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「導入が簡単、システム連携が簡単」

 今回のt-Sortによる自動仕分けラインの導入は2日間で完了したという。亀山氏は「導入が簡単、システム連携が簡単なので障壁は極めて低い。物流センターとしての稼働に大きな影響を与えることなく短期間で導入を完了できたことも大きなメリットだった」と強調する。

 実際に、ゴムマットを並べてからt-Sortを載せるなどのライン構築作業は容易であり、作業者の業務内容も従来の人海戦術による仕分けと比べてシンプルになっており、新しい業務内容に対応するための特別なトレーニングなどは必要ない。さらに、物流センターで運用している現行のWMS(倉庫管理システム)を改修する必要はなく、WMSから出力したCSVファイルをt-Sortの制御システムである「+Hub」に取り込むだけで運用を開始できる。

「t-Sort」を制御する「+Hub」の画面
「t-Sort」を制御する「+Hub」の画面,「t-Sort」を制御する「+Hub」の画面[クリックで拡大] 出所:山善

 自動仕分けラインの導入によって、作業者は従来の12人から5人に削減でき、作業効率も約3倍と大幅に向上した。「人海戦術に頼っていて最も手間が掛かっていたので、効率化と自動化の効果はかなり大きい。余剰人員については、他の業務についてもらっている」(亀山氏)という。

 単なる効率化と自動化にとどまらず、仕分け作業の精度を向上する効果も得られた。従来の人手による仕分け作業は、出荷先の店舗別に商品を仕分けるシングルピッキングで行っていた。出荷総量をまとめてピッキングしてから各商品を出荷先別に仕分けるトータルピッキングと比べてシングルピッキングは効率で劣るものの、誤仕分けが少なくて済むという特徴があり、仕分け作業の精度を優先してシングルピッキングを採用していた。とはいえ人手で仕分けを行う以上、誤仕分けが発生しないわけではない。

 これに対して、t-Sortによる自動仕分けラインは、出荷総量をまとめてピッキングしてからt-Sortで仕分けるトータルピッキングになる。しかし、その仕分け作業をAGVであるt-Sortが行うことにより誤仕分けの発生はほぼゼロに抑えることができた。また、シュートで仕分けられた商品を梱包する段ボール箱の荷札や納品書もt-Sortによる自動仕分けを行っている。これによって、出荷に関わる作業精度の低下もほぼ起こらない仕組みとなっているのだ。

自動仕分けラインでの商品投入作業の様子
自動仕分けラインでの商品投入作業の様子[クリックで拡大] 出所:山善

今後は「3Dソーター」の導入も

 今回のシステム導入では、山善が検討した自動仕分けのワークフローや要件を受けて、プラスオートメーションがシステムを構築した。亀山氏は「シュートの割り付けでは、100ピース程度で出荷頻度の多いシュートを中央に寄せるなどの工夫が必要だった。また、導入初期のテストではt-Sortが“渋滞”するという問題も起きたが、プラスオートメーションと協力して解決することができた」と説明する。この他にも、月額レンタルとなるサブスクリプションで導入している点も興味深い取り組みといえるだろう。

 今後の取り組みとしては、現時点で50個となっているシュートの数を増強していくことを検討している。自動仕分けラインをより縦長にする形での対応ではなく、各シュートから複数の投入口に分けて搬送できる「3Dソーター」を導入したい考えだ。この他にも、入荷仕分け、返品、メーカー別の仕分けなどのプロセスに適用範囲を広げる方向性もある。

 亀山氏は「物流のスマート化の事例として見学の申し込みも出ている。さまざまな取り組みを進める中でノウハウを蓄積し、山善としての生産現場や物流現場の自動化の提案にも展開できるようにしていきたい」と述べている。

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