劣化バッテリーのコムスが急坂を余裕で登る、リチウムイオンキャパシタが貢献:電動化(2/2 ページ)
ジェイテクトが、リチウムイオンキャパシタの提案に力を入れている。現在新たに打ち出しているのは、リチウムイオン電池や燃料電池とリチウムイオンキャパシタを並列接続するメリットだ。
リチウムイオンキャパシタを劣化した鉛蓄電池に並列接続すると、アクセルをベタ踏みする必要はあるものの、警報音が鳴ることもなく安定して急な坂を登りきる。駆動用バッテリーの劣化を感じることなく車両を使うことができた。
また、走行中の電流の変化をみると、リチウムイオンキャパシタが登り坂での出力をアシストするとともに、下り坂でのエネルギー回生による鉛蓄電池への充電を穏やかにし、鉛蓄電池への負荷を軽減していることが分かる。リチウムイオンキャパシタによる負荷軽減の効果は、駆動用バッテリーが劣化した状態での延命だけでなく、新車時からでも得られる。
コムスのバッテリー載せ替え費用は20〜30万円で、購入後3年ほどでバッテリー交換が必要になるほど劣化してしまうことも少なくないという。そのため、長期にわたって使用することが難しい。試験車両には、リチウムイオンキャパシタ24個からなるモジュール1つを搭載したが、そのコストは「鉛蓄電池の載せ替え費用よりは安く抑えられる」(ジェイテクトの説明員)と見込んでいる。また、リチウムイオンキャパシタは長寿命なため、乗用車の一般的な使用期間であれば交換せずに使い続けることができるという。
動作温度範囲の広さに強み
ジェイテクトは社内で独自にリチウムイオンキャパシタの開発を進め、2017年に発表。2019年には同社 花園工場(愛知県岡崎市)で生産を始めた。
既存のリチウムイオンキャパシタは動作温度範囲が−20〜+60℃と高温でも低温でも制限があったが、ジェイテクトは動作温度範囲を−40〜+85℃に広げた。材料の組み合わせによって耐熱性を高めるとともに、電極を乾燥させる際の露点を下げることで低温環境での性能も確保した。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- リチウムイオン電池を長持ちさせたいときに気を付けること
今回は電池の寿命や劣化に関するあれこれについて、電池評価に携わる立場からの所見をまとめていきたいと思います。なお、昨今のスマートフォンや電気自動車(EV)などに使用されている電池の多くは「リチウムイオン電池」であるため、本稿はその前提で話を進めていきます。 - 車載用から他の用途へ、リチウムイオン電池のリユースの「論点」
今回は「持続可能な開発」のために今後同様に重要となるであろう、電池の「再利用」(リユース)について解説していきたいと思います。 - リチウムイオンキャパシターを搭載した燃料電池ドローンが試験飛行に成功
ジェイテクトは2022年6月20日、同社製のリチウムイオンキャパシターを搭載した燃料電池ドローンが試験飛行に成功したと発表した。燃料電池ドローンはロボデックスが開発したもので、「Japan Drone2022」(2022年6月21〜23日、幕張メッセ)に出展する。 - 日野ダカールラリー参戦車両がHEV化、ジェイテクトのリチウムイオンキャパシター採用
ジェイテクトは2021年10月27日、日野自動車が「日野チームスガワラ」として参戦するダカール・ラリー2022(2022年1月2〜14日、サウジアラビア)の参戦車両に、高耐熱リチウムイオンキャパシターが採用されたと発表した。 - ジェイテクトのリチウムイオンキャパシタ、4年で黒字化、年産100万セル目指す
ジェイテクトは、2024年度までに高耐熱リチウムイオンキャパシタ事業を黒字化させ、年間売上高25億円に成長させる。同製品は2019年に生産を開始した新規事業だ。既存のキャパシタと比べた動作温度範囲の広さや耐久性の高さ、リチウムイオン電池にはない急速充放電の特性を生かし、車載用などで採用拡大を見込む。 - 大型SUVや商用車にも必要な自動運転、大型車のパワステ電動化のポイントは
ジェイテクトは、SUVや商用車などサイズの大きい車両の電動化と自動運転化に取り組んでいる。SUVや商用車は油圧パワーステアリングが主流だが、環境規制に対応するとともに、運転支援技術や自動運転システムを搭載するには電動パワーステアリング(EPS)が欠かせない。しかし、大型車にEPSが採用されてこなかった背景には幾つかの要因もある。EPS搭載車両の拡大に向けた取り組みを、同社のテストコースがある伊賀試験場(三重県伊賀市)で体験した。 - ジェイテクトが車載用リチウムイオンキャパシターを開発、85℃まで耐熱性向上
ジェイテクトは車載向けに高耐熱のリチウムイオンキャパシターを開発した。電極材料は外部から調達したが、混練や加工といった工程は、社内の専門部署で行った。リチウムイオンキャパシターの動作温度はこれまで60℃が限界だったが、材料の配合の工夫などにより85℃まで耐熱性を高めた。