大型SUVや商用車にも必要な自動運転、大型車のパワステ電動化のポイントは:自動運転技術(1/2 ページ)
ジェイテクトは、SUVや商用車などサイズの大きい車両の電動化と自動運転化に取り組んでいる。SUVや商用車は油圧パワーステアリングが主流だが、環境規制に対応するとともに、運転支援技術や自動運転システムを搭載するには電動パワーステアリング(EPS)が欠かせない。しかし、大型車にEPSが採用されてこなかった背景には幾つかの要因もある。EPS搭載車両の拡大に向けた取り組みを、同社のテストコースがある伊賀試験場(三重県伊賀市)で体験した。
ジェイテクトは、SUVや商用車などサイズの大きい車両の電動化と自動運転化に取り組んでいる。SUVや商用車は油圧パワーステアリングが主流だが、環境規制に対応するとともに、運転支援技術や自動運転システムを搭載するには電動パワーステアリング(EPS)が欠かせない。しかし、大型車にEPSが採用されてこなかった背景には幾つかの要因もある。
EPS搭載車両の拡大に向けた取り組みを、同社のテストコースがある伊賀試験場(三重県伊賀市)で体験した。
ラックパラレルタイプも自動運転対応に、次は商用車
今回、伊賀試験場で試乗した実験車両の1つが自動運転対応EPSを搭載したトヨタ自動車「カムリ」だ。カムリに標準で搭載されているラックパラレルEPSに、ドライバーの操作の検知や自動運転中の高精度な舵角の制御、操舵(そうだ)権限のスムーズな切り替えといった機能を持たせた。
自動運転対応EPSそのものは、2017年に記者向けに実施した技術体験会でトヨタ自動車の「オーリス」に搭載して公開済みだ。今回は、オーリスに搭載されているコラムEPSだけでなく、ラックパラレルEPSでも同様の機能を実現できることをアピールした。
ラックパラレルEPSは、タイヤに近い位置にモーターとECUを設置するラックアシストタイプの1種。他のアシスト方式と比較して操舵性能が高く、中・大型車に向くのが特徴だ。ピニオン軸にトルクセンサー、ラックと同軸にモーターを配置した「ラック同軸EPS」の進化形となる。ジェイテクトでは2016年12月から生産が始まった比較的新しい製品で、レクサスブランドのフラグシップクーペ「LC」やカムリなどで採用されている。
Dセグメント以上のモデルを中心に日本や北米、ASEANで搭載が拡大するという。ラック同軸EPSがFR(後輪駆動)向けだったのに対し、ラックパラレルEPSはFRだけでなく台数規模の大きいFF(前輪駆動)でも採用を見込んでいる。
ジェイテクトの自動運転対応EPSは、新しいセンサーを追加するのではなく、既存の技術やノウハウを活用している。例えば、ドライバーがステアリングから手を離しているかどうかについては、トルクセンサーと角度センサーの情報を基に、約2秒で手を離したことを検知できる。これは、EPS開発のノウハウを基にドライバーの操作によって発生するトルクのモデルを構築、路面からの入力と区別することで実現している。
同様に、自動運転中にドライバーが自分で運転しようとステアリングを握ったことの検知も素早く行える。手離し状態からドライバーのステアリング操作によって反力が変わったタイミングで、EPSのモーターを自動運転向けの角度制御から手動操舵向けのアシスト制御に切り替える。これにより、自動運転から手動運転にスムーズに移行することが可能となる。
さらに、ラックパラレルEPSではカバーできないバスやトラックに向けても、ステアリングシステムの電動化を提案していく。SUVやピックアップトラックよりも大きな軸力が必要な商用車は、EPSではなく油圧パワーステアリングが引き続き採用される見通しだ。それを、自動運転システムに対応させるために、従来の油圧パワーステアリングシステムに乗用車のコラムEPSのようなモーターを追加する。コラムと同軸に配置したモーターがドライバーの代わりに油圧パワーステアリングを操作するイメージだ。
高速道路での隊列走行で後続車両を無人運転化する他、バス停に車両を寄せて停止するなどの自動駐車といった機能に向けて、サンプルを自動車メーカーに提案している。ステアリングシステムのハードウェアだけでなく、制御のソフトウェアも含めて提供する方針だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.