材料非線形性の基礎、そして複雑な材料モデルの理論を知る:いまさら聞けない 非線形構造解析入門(4)(4/4 ページ)
多くの3D CADではオプションとしてCAE機能が用意されているが、多くの方が「線形解析」での利用にとどまっており、「非線形解析」にまで踏み出せていない現状がある。本連載では、構造解析でも特に非線形解析にフォーカスし、初心者向けに分かりやすくその特長や活用メリットなどを紹介する。連載第4回では、3つの非線形性のうちの1つ「材料非線形性」について取り上げる。
粘弾性材料
最後に軽く、粘弾性にも触れておこうと思います。
粘弾性材料は、その材料の挙動が“時間”に依存します。ゴムなどもそのような挙動を示しますし、ゲル状の材料はさらに顕著です。ゴムをはじめとする高分子材料を勢いよく引っ張れば材料は硬く反応しますし、じわじわとゆっくり引っ張れば柔らかく反応する特徴があります。
また、「応力緩和」などの現象も生じます。応力緩和とは、ある一定のひずみを維持していると、その物体内部に発生している応力が時間とともに低下していくような現象です。このような材料の挙動を表現するためには、やはり粘弾性材料の使用が必要になります。
この応力緩和の挙動は、以下のような式で表すことができます。
このような材料の表現には、バネとダッシュポッドを直列や並列につないで表現するモデルが用いられ、解析ソフトなどでは、例えば直列につないだMaxwellモデルを並列に幾つもつなぎ、さらに長期剛性を表現するためのバネも並列につないだ「一般化Maxwellモデル」を用いることが多いのではないかと思います。
上記の一般化Maxwellモデルの剛性は、以下のような式で表現できます。
この材料物性は、材料の応力緩和試験や動的試験から得られた結果のカーブフィッティングによって求めることが一般的だと思います。
まとめ
世の中の線形弾性材料以外の全ての材料は、非線形材料です。線形弾性材料と比較すると非線形材料は、材料モデルとして複雑であり、材料モデルの背景にある理論を知っておくことが重要です。また、線形弾性材料のヤング率やポアソン比といった定数で表現できるわけではなく、試験を行った上で導き出す必要もあります。
より複雑な解析モデルになってきますが、金属の塑性加工などの加工シミュレーションや、ゴムやゲルなどの高分子材料を使った応力解析には、今回紹介したような材料モデルが必須となってきます。ゴムなどの材料は一般的な製品解析でもよく用いられる材料と思いますので、そのような材料を扱っている方はぜひ試してみてはいかがでしょうか? (次回へ続く)
Profile
水野 操(みずの みさお)
1967年生まれ。mfabrica合同会社 社長。ニコラデザイン・アンド・テクノロジー代表取締役。3D-GAN理事。外資系大手PLMベンダーやコンサルティングファームにて3次元CADやCAE、エンタープライズPDMの導入に携わった他、プロダクトマーケティングやビジネスデベロップメントに従事。2004年11月にニコラデザイン・アンド・テクノロジーを起業し、オリジナルブランドの製品を展開。2016年に新たにmfabrica合同会社を設立し、3D CADやCAE、3Dプリンタ関連事業、製品開発、新規事業支援のサービスを積極的に推進している。著書に著書に『絵ときでわかる3次元CADの本』(日刊工業新聞社刊)などがある。
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