ヤンマーが稲作農家でも甘いトマトを作れる装置を開発、イチゴも年2作を実現:スマートアグリ(2/2 ページ)
ヤンマーアグリジャパンとヤンマーグリーンシステムは、「施設園芸・植物工場展2022(GPEC)」において、稲作農家向けのトマト栽培ソリューションや、イチゴを年2作収穫できる断熱送風栽培層などを展示した。
花が咲いても実が成らない夏イチゴ
NS-2と同様に、発泡素材を利用しているのがイチゴの断熱送風栽培層「DN-1」だ。イチゴは、最も需要が高まるクリスマスシーズンに合わせて秋から冬にかけて栽培されるのが一般的だ。春以降に、イチゴがスーパーマーケットの売り場などで見掛けられなくなるのはこのためだ。
DN-1は、これまで秋から冬、年1回の栽培が一般的だったイチゴについて、春から夏も栽培して年2作を可能にするシステムである。この春から夏に栽培する“夏イチゴ”の課題は、花は咲かせられるものの、その後梅雨時期から暑くなることで実が成らないことだった。
ヤンマーグループでは、この夏イチゴを可能にするシステムとして、ハウス全体ではなくイチゴの株元へ局所的に冷暖房で温度調整した空気を送るDN-1の研究開発を行っていた。2019年からは、夏イチゴに取り組む栃木県の農家と協業することでDN-1の効果を実証し、イチゴの年2作を実現した。2021年からは、DN-1の一般販売を開始している。
この他、イチゴ関連では、長大なパン式のベルトコンベヤーと20人以上の作業員で行ってきた選果とパック詰めのシステムに対して、一粒一粒の重量測定やAI(人工知能)による3D形状判定が可能なスマート選果システムと、同システムで選果したイチゴをプロジェクションマッピングによる指示で熟練者でなくても簡単にパック詰めができるシステムを提案した。「人手不足の影響で20人以上の人数をそろえることは難しくなっている。スマート選果システムとプロジェクションマッピングであれば、たとえ作業者が1人しかいなくても選果とパック詰めの作業を効率よく行える」(同説明員)という。
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