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人手不足と高齢化の漁業を救う、「自動着桟システム」の最前線船も「CASE」(1/3 ページ)

ヤンマーは、「最大の豊かさを最小の資源で実現する」というテクノロジーコンセプトを掲げ、そのコンセプトを実現する研究開発テーマを定めている。マリン関連の研究開発テーマとしては、海域調査やインフラ点検などに貢献する「ロボティックボート」、1本のジョイスティックだけで操船できるようにする「ジョイスティック操船システム」「自動航行」と「自動着桟」、そして、船舶特有の動揺を抑制する「サスペンションボート」に取り組んでいる。

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高難度の着桟操船、自動化できる?

 自動運航技術において、障害物回避と並んで困難なのが「着岸(着桟)操船」だ。航空機で最も難しい操縦が着陸であるのと同様に、船舶の着岸はたとえ有人であっても難易度が最も高い操船技術の1つだ。

 着岸操船において船は微速で移動する。これは、万が一衝突した場合に、衝撃が少しでも小さくなるようにするためもあるが、それ以上に、船にはブレーキがなく、船を停止するにはスクリューを反転して後進させなければならず、短時間で停止するには船の速度を落としておかなければならないためだ。

 しかし、船速を落とすと風と潮流の影響が大きくなってしまう。これは、速度が速いときは船の運動エネルギーが大きいので船体が受ける風の力(風圧)は相対的に小さいが、速度を落として運動エネルギーが小さくなると船体が受ける風の力は相対的に大きくなるためだ。特に操船針路とは異なる方向から急に吹いてくる突風は、船を思わぬ方向に流してしまう。

 風の影響は船体の大きい大型船ほど大きくなる。しかし、大型船は着岸時にタグボートや岸壁側作業員の支援を受けたり、船体水線化側面に設けた推進器(スラスター)を搭載して横にも移動できたりと細かい操船ができるので、突発的な変化への対応は比較的容易といえる。

 一方で、漁船やヨット、パワーボートなどの小型船舶では、船体は小さくて風から受ける力は相対的に小さいものの、運動エネルギーは小さく、かつ、漁船やパワーボートでは水面下船体容積が少ないので、風を受けたとき流されやすい。

 また、多くの場合、操船者が少人数、もしくは1人のことが多く、かつ、スラスターなどの横移動用の推進器も搭載できないことが多いので、着岸操船はより困難になる。加えて、小型漁船を利用する漁師は高齢化が進んだ影響で単独操船による着岸は困難、というより、危険度が増している状況になりつつある。

 このような、小型船舶における着岸操船の自動化に取り組んでいるのがヤンマーだ。

 ヤンマーのマリン事業における大きなユーザー層が小型漁船関連とヨット、パワーボードなどのプレジャーボード関連だ。これら小型船舶の自動着岸の実現を目指して開発を進めているシステムについて、ヤンマーホールディングス 技術本部中央研究所の開発者たちに聞いた(一般的には接岸、着岸という言葉が一般的だが、国土交通省の定義に基づき桟橋に着けるという意味で「着桟」という言葉を使っている)。


2016年度に海底資源調査のための洋上中継器の実証機(ASV)として国立研究開発法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)にロボティックボートを納入した。ASVにより、複数のAUV/ROV(深海無人探査機)をトラッキングすることで、低コストかつ高効率な海洋資源調査を目指している(クリックして拡大)

危険水域や漁網の存在を示す小型ブイの検出

 ヤンマーは、「最大の豊かさを最小の資源で実現する」というテクノロジーコンセプトを掲げ、そのコンセプトを実現する研究開発テーマを定めている。マリン関連の研究開発テーマとしては、海域調査やインフラ点検などに貢献する「ロボティックボート」、1本のジョイスティックだけで操船できるようにする「ジョイスティック操船システム」「自動航行」と「自動着桟」、そして、船舶特有の動揺を抑制する「サスペンションボート」に取り組んでいる。


ジョイスティック操船システムは自動着桟システムにも取り入れられている(クリックして拡大)

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