ヤンマーが環境認識システムを開発、自動車向けと一味違う技術力をアピール:ET&IoT 2021
ヤンマーホールディングスは、「ET&IoT 2021」において「ヤンマー環境認識システム」を披露した。同社が農業機械や建設機械向けに開発している技術で、屋外をはじめとするさまざまな環境でAIによる画像認識が可能なことを特徴とする。
ヤンマーホールディングスは、「ET&IoT 2021」(2021年11月17〜19日、パシフィコ横浜)において「ヤンマー環境認識システム」を披露した。同社が農業機械や建設機械向けに開発している技術で、屋外をはじめとするさまざまな環境でAI(人工知能)による認識が可能なことを特徴とする。
同システムは、市販のカメラ2個で構成するステレオカメラと、NVIDIAの組み込みAIボード「Jetson AGX Xavier」から構成されている。10fps以上の認識スピードを持つなど高いリアルタイム性を持ち、逆光などの照明変動、砂塵や降雪などの環境変動に合わせて画像を鮮明に補正する機能を備えている。AI画像認識機能としては、距離計測、物体検知、領域判別などがある。1〜15mの範囲で行える距離計測の誤差は約5%以内を確保した。物体検知では人だけでなく車両や稲などを検知し、領域判別では圃場の畔などを画素単位で判別できる。また、前方と後方など、2セットのステレオカメラを1システムで制御することも可能だ。
こういったAI画像認識技術では、自動車の自動運転技術やADAS(先進運転支援システム)向けのものを、同じく陸上を走行するモビリティである農業機械や建設機械に適用できそうなイメージが強い。しかし「これまで自動車向けに開発されたAI画像認識技術を多数提案してもらったが、農場や建設現場など道路以外の場所で利用される農業機械や建設機械に最適とはいえないのが実情だった」(ヤンマーホールディングスの説明員)という。
そこで、開発を進めてきたのがヤンマー環境認識システムだ。農業機械や建設機械に加えて、農場や建設現場の監視用途などで活用できるとみているが、ET&IoT 2021への出展によりその他のさまざまなニーズを掘り起こしたい考えである。
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