ヤンマーがサービス専門施設を新設、IoT活用の進化でAIによる部品消耗予測も:製造業がサービス業となる日
ヤンマーホールディングスは、同社グループのグローバルCS(顧客満足)拠点となる「ヤンマーシナジースクエア」の運営を2020年10月19日に開始する。YSQの建屋は、ヤンマーのサービス関連3社を統合して設立したヤンマーグローバルCSの新社屋として機能する他、本社内にあった「リモートサポートセンター」が機能を強化して移設される。
ヤンマーホールディングスは2020年10月8日、オンラインで会見を開き、同社グループのグローバルCS(顧客満足)拠点となる「ヤンマーシナジースクエア(YSQ)」(兵庫県尼崎市)の運営を同年10月19日に開始すると発表した。5階建てのYSQの建屋は、4月にヤンマーのサービス関連3社を統合して設立したヤンマーグローバルCSの新社屋として機能する他、本社(大阪市北区)内にあった「リモートサポートセンター」が機能を強化して移設される。YSQの投資金額は約25億円だ。
YSQは、ヤンマーのサービスの進化の実現に向け、全世界のビジネスパートナーとヤンマーとがそれぞれの知見・ノウハウを集結させ相乗効果(“SYNERGY”)を生み、未来に向けた新たなサービスソリューションを創出していく場所・広場(“SQUARE“)にしたいという思いを込めて命名された。
ヤンマーグローバルCS 社長の柴田研吾氏は「創業当初からの“顧客の手を止めない思い”をベースに、時代と顧客の要望に応えるために常に改善と進化を続け、サービス品質の向上に努めてきた。この“止めない思い”を形にしたのが、サービスを中核とした初めての施設となるYSQだ」と語る。
延べ床面積5650m2、5階建ての建屋の内、エントランスとなる1階は、ヤンマーのサービスの歴史や精神、未来を体感できるコンテンツを数多く展示する「サービス展示エリア」となっている。本社とYSQ、阪神地区にある3工場(ヤンマーパワーテクノロジーの尼崎工場と塚口工場、神崎高級工機製作所)を含めた施設見学により、顧客や取引先との関係強化を図る狙いがあり、年間3000人の来場を目標としている。
ヤンマー製品の通信端末搭載は総計11万台まで拡大
2階には、ヤンマーグローバルCSによるサービス提供の中核機能となるリモートサポートセンターが設置される。ヤンマーのリモートサポートセンターは、主力事業の農業機械だけでなく建設機械や船舶、発電機などのサポートを24時間365日の体制で対応していることで知られている。
今回のYSQへの移転によって、リモートサポートセンターに新たな機能が加わることとなった。顧客支援では、各種遠隔監視システムの使用方法サポートを実施する「システムサポートデスク」、営業やサービスマンが行う顧客へのアプローチをサポートする「インサイドセールス」が追加される。サービス現場支援の機能としては、遠隔でサービスマンへ技術サポートを実施する「遠隔技術サポート」、夜間休日などの顧客からの電話受付窓口となる「サービスマンコール」を用意した。「デジタル技術の活用は重要だが、顧客とのアナログな接点も拡充する必要がある」(柴田氏)。
そして、通信端末搭載が総計11万台まで拡大し、IoT(モノのインターネット)化したヤンマー製品から得られるデータの活用を進めるため、データ分析・コンサルティングの機能も拡張する。「データ高度分析」では、AI(人工知能)の活用によって部品消耗予測や故障の未然防止などを図り、「コンサルティング」ではヤンマーの製品やサービスを活用した新ビジネスの創出に向けたデータ活用、システム構築コンサルティングを行う。
なお、YSQの3階はヤンマーグローバルCSのバックオフィスエリア、4階は食堂・会議室エリア、5階は研修室となっている。
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