ヤマ発が生産拠点の脱炭素化を2050年から2035年に前倒し、そのロードマップは:脱炭素(2/2 ページ)
ヤマハ発動機は2022年6月28日、自社の生産拠点におけるカーボンニュートラル達成の時期を2050年から2035年に前倒しすると発表した。2035年時点で生産拠点のCO2排出量を2010年比で92%削減し、残りの8%をさまざまな手法でオフセットし、カーボンニュートラル達成を目指す。
価値のあるエネルギー消費を見つけ出す
最少化の取り組みは、「理論値エナジー活動」によって削減すべきエネルギーを洗い出す。具体的には、材料の形や質を変えるのに必要なエネルギーを「価値エネルギー」、設備で最低限必要なエネルギーを「準価値エネルギー」とし、それ以外を「無価値エネルギー」とする。エネルギーの価値の判断では各種計測器を活用する。無価値エネルギーをゼロに、準価値エネルギーを最少化していく。エネルギーの価値を基にサイクルタイムの短縮や寄せ止め、設備の自動停止など工場全体の効率改善を図っていく。さらに、今後の設備更新では導入コストとのバランスを取りながら、エネルギー消費を30%以上削減することを条件とする。
鋳造や塗装など、エネルギー消費が特に大きい工程では新技術を導入する。鋳造ラインでは2022年から超薄肉ダイカスト鋳造機を導入する。油圧機構をサーボモーターによって電動化する他、排熱回収により消費エネルギーを半減させた。設備メーカーと理論値エナジー活動を推進して仕様を作り込んだ。高速鋳造によって生産性や品質の向上を図る。
2024年に導入する塗装ラインでは、化石燃料由来の蒸気や都市ガスを使用しないカーボンニュートラルな塗装を実現する。前処理や塗装ブースでは、蒸気の加熱をヒートポンプに置き換える。低温焼き付け塗料の開発による低加温化や水素バーナーの活用も検討している。これにより、30%以上の省エネを目指す。
再エネ比率を大幅に拡大、オフセット技術にも高い期待
「クリーン化」では、CO2フリー電気の導入比率をグローバルで2024年に24%、2030年に85%、2035年に92%と、段階的に引き上げていく。現在のCO2フリー電気の比率はグローバルで3%にとどまる。
日本国内では、本社管轄の全ての事業所に対して2022年7月からCO2を排出しない水力発電の「静岡Greenでんき」を導入する。海外拠点では、2030年までにCO2フリー電気を導入する。国内外のグループ会社も再エネの導入を順次進める。事業所での太陽光発電設備も導入を進め、自社由来の再エネ比率も高めていく。
こうした取り組みを重ねた上で削減しきれなかったCO2は、さまざまな技術でオフセットする。具体的には、回収したCO2によるメタンや炭素素材の生成、植林、カーボンストレージ、森林吸収などのクレジット購入などを想定している。将来の技術動向によって選択肢は変わってくるとみているが、関連技術は2030年ごろに大きくブレークすると期待を寄せる。水素バーナーへの期待も高い。
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