トヨタが世界初の水素バーナーを開発、国内工場1000台のガスバーナーを置き換え:研究開発の最前線
トヨタ自動車は、工業利用を目的とした汎用バーナーとして「世界初」(同社)となる水素燃料のバーナー(以下、水素バーナー)を、中外炉工業との協力により開発したと発表した。本社工場(愛知県豊田市)鍛造ラインに導入しており、他の国内工場にも順次展開していく方針。
トヨタ自動車は2018年11月8日、工業利用を目的とした汎用バーナーとして「世界初」(同社)となる水素燃料のバーナー(以下、水素バーナー)を、中外炉工業との協力により開発したと発表した。同日から本社工場(愛知県豊田市)鍛造ラインに導入しており、「トヨタ環境チャレンジ2050」の「工場CO2ゼロチャレンジ」達成に向けて他の国内工場にも順次展開していく方針。
新開発の水素バーナーは、水素を緩やかに燃焼させる2つの新機構を導入。化石燃料ではなく、水素を燃やすことによりCO2排出をゼロにするとともに、空気中での高温燃焼で発生するNOx排出量を一般的な都市ガスバーナー以下のレベルまで低減し、高い環境性能を両立したとする。
2つある新機構のうち1つは、水素と酸素が混ざらないようにするものだ。水素と酸素が完全に混合した状態で着火すると、激しく燃焼し火炎温度が高くなる。水素と酸素をバーナー内で並行に流して、完全に混合していない状態で緩慢に燃焼させることで、火炎温度を下げている。
もう1つは、酸素濃度を下げる機構になる。バーナー内の酸素濃度が高い状態で着火すると、激しく燃焼し火炎温度が高くなる。そこで、水素をバーナー内に供給するパイプの中腹に小さな穴を空け、少量の水素と酸素をあらかじめ燃焼(予燃焼)させ、酸素濃度を適正値(19%)に下げた状態で主燃焼が始まるようにして火炎温度を下げた。
これまで水素バーナーの実用化では、バーナー内で水素と酸素が急速に反応する激しい燃焼で火炎温度が高くなり、環境負荷物質のNOxが多く生成されるという課題があった。今回採用した2つの機構は、この課題を解決するものだ。
なお、トヨタ自動車は「トヨタ環境チャレンジ2050」の「工場CO2ゼロチャレンジ」において、工場で使用するエネルギーを再生可能エネルギーや水素に置き換えていく方針を示している。現在、同社の国内工場には、工場設備の中でもCO2排出量が多い大型都市ガスバーナーが1000台以上導入されている。これらを水素バーナーに置き換えることで、工場CO2ゼロチャレンジの達成に近づけたいとしている。
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