米国向け大型燃料電池トラックに改良版、走行距離は320kmから480kmに:燃料電池車
トヨタ自動車は2018年7月30日(現地時間)、自動車産業の課題や米国経済への影響を研究、分析するCenter for Automotive Researchのイベントにおいて、走行距離を延長した大型トラックタイプの燃料電池車(FCトラック)の改良版を公開したと発表した。カリフォルニア州で行っている実証実験に、2018年秋から改良型を追加導入する。
トヨタ自動車は2018年7月30日(現地時間)、自動車産業の課題や米国経済への影響を研究、分析するCenter for Automotive Researchのイベントにおいて、走行距離を延長した大型トラックタイプの燃料電池車(FCトラック)の改良版を公開したと発表した。カリフォルニア州で行っている実証実験に、2018年秋から改良型を追加導入する。
改良版の大型FCトラックは居住性と操縦性を向上させた。燃料電池(FC)ユニットの配置を工夫し、ホイールベースを延長することなく先代モデルよりも広い車内空間を確保。水素タンクの本数は4本から6本に増やして走行距離を320kmから480kmに伸ばした。また、運転席のスペースに簡易ベッドも備えた。この大型FCトラックは、燃料電池車「ミライ」のFCスタック2基と12kWhの駆動用バッテリーを使用し、出力500kW、トルク1800Nmを発揮する。
米国では、貨物輸送の大型トラックが4万3000台以上利用されており、これによる大気汚染対策が課題となっていた。このうち、カリフォルニア州のロングビーチ港やロサンゼルス港では、貨物輸送で1万6000台以上の大型トラックが走行しており、2030年までにその台数は3万2000台に拡大すると見込まれる。トヨタ自動車の実証実験は、港湾エリアの貨物輸送に大型FCトラックを用いることで環境改善に取り組んでいる。
また、ロングビーチ港では、水素ステーションと発電所を併設した施設「Tri-Gen(トライジェン)」の建設も進めている。1日当たり、1.2トンの水素と2.35MWhの電力を生み出す。水素は廃棄物系バイオマスから取り出したもので、販売店に輸送する納車前のミライや大型FCトラックに充てんする。電力はFC発電によって得たもので、一般家庭2350世帯分のエネルギー消費量をまかなえる。発電した電力の一部は、ロングビーチ港にあるトヨタ自動車の物流拠点にも供給されており、再生可能エネルギーのみを使用する施設となる。
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