2030年のFCV普及見通しは乗用車タイプで1000万台超、FCトラックは50万台:燃料電池車
自動車メーカーやエネルギー産業、重工業の大手企業13社で構成する水素協議会(Hydrogen Council)は、2050年までを視野に入れた水素利用の調査報告を発表した。水素エネルギーの普及によりCO2排出量を現状比で年間60億トン減らすとともに、平均気温の上昇を2℃までに抑える上で必要なCO2削減量の20%をカバーする見通しだ。
自動車メーカーやエネルギー産業、重工業の大手企業13社で構成する水素協議会(Hydrogen Council)(※1)は2017年11月13日(現地時間)、2050年までを視野に入れた水素利用の調査報告を発表した。
(※1)関連記事:売上高は合計130兆円、トヨタやホンダなど13社が参画する水素協議会が発足
報告書の中では、水素エネルギーの大量導入によって、2050年に水素がエネルギー消費量全体の5分の1となる80EJ(エクサジュール)をカバーすることが可能だと言及。これにより、CO2排出量を現状比で年間60億トン減らすとともに、平均気温の上昇を2℃までに抑える上で必要なCO2削減量の20%を水素エネルギーが担えるとしている。さらに、2兆5000億ドル(約276兆円)に相当するビジネスと3000万人以上の雇用を創出する可能性も示した。
FCVの需要はどうなる?
水素協議会は燃料電池車(FCV)の需要見通しもまとめており、2030年までに乗用車タイプが1000万〜1500万台、トラックは50万台が普及すると見込む。FCVの燃料としてだけでなく、他の産業でもさまざまな利用が進み、水素の需要は現在の10倍に拡大するという。
こうした水素エネルギーの導入と普及が大掛かりな投資を生むと予測する。年間投資額は200億〜250億ドル(約2兆2000億〜2兆7000億円)で、2030年までに累計で2800億ドル(約31兆円)の投資が必要になると試算している。今回発表した調査報告書では、長期間の安定的な政策インセンティブを含めた適切な規制の枠組みがあれば、投資家にとって魅力的な投資先となるとしている。
現在のグローバルでのエネルギー分野への投資は毎年1兆7000億ドル(約188兆円)だ。この投資額には石油・ガスで6500億ドル(約72兆円)、再生可能エネルギーで3000億ドル(約33兆1900億円)、自動車産業で3000億ドル以上という額が含まれている。
今回の発表は、共同議長であるトヨタ自動車 会長の内山田竹志氏とエア・リキード(Air Liquide)のCEOであるブノワ・ポチエ氏の他、18人の水素協議会のシニアメンバーが出席した「Sustainability Innovation Forum」の中で行われた。
トヨタ自動車とエア・リキード(Air Liquide)の他には、自動車業界からホンダ、BMWグループ、ダイムラー(Daimler)、現代自動車(Hyundai motor)、重電業界から川崎重工業、アルストム(Alstom)、エネルギー業界からアングロ・アメリカン(Anglo American)、エンジー(Engie)、ロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)、リンデ(Linde)グループ、トタル(Total)が水素協議会に参加している。
関連記事
- トヨタの燃料電池車特許の無償公開に見る、4つの論点
トヨタ自動車は2015年1月6日に燃料電池自動車(FCV)の内外特許約5680件を無償公開すると発表しました。「なぜ特許を無償公開するのか」「なぜ2020年の期限付きなのか」「米テスラ・モーターズのEV関連特許開放との関連性」「ホンダとの協調の可能性」など4つの疑問点について、知財専門家が解説します。 - トヨタが燃料電池車の価格を700万円に低減、ハイブリッド車と部品を共用
トヨタ自動車はセダンタイプの燃料電池車の量産モデルを公開。日本では2014年度内(2015年3月末まで)に発売し、価格は700万円程度を予定している。燃料電池車固有の部品を除き、ハイブリッド車との部品共用でコスト削減につなげたという。 - 「ミライ」2台分のシステムを搭載する燃料電池バス、水素タンク8本で150km走行
トヨタ自動車と日野自動車は、燃料電池バス「トヨタ FC BUS(以下、FCバス)」を新開発した。セダンタイプの燃料電池車「ミライ」の燃料電池システム2台分に加えて、耐圧70Mpa水素タンクを8本搭載。満タン状態からの走行距離は150kmとなっている。 - トヨタ日産ホンダが水素ステーション整備で合意、運営費用を一部負担へ
トヨタ自動車、日産自動車、ホンダの3社は、燃料電池車の燃料である水素ガスを供給する水素ステーションの整備促進に向けた支援策を検討し、共同で取り組むことに合意したと発表した。 - 2030年の燃料電池車「FCV PLUS」は「24時間働くクルマ」
トヨタ自動車が「東京モーターショー2015」で初披露した燃料電池車のコンセプトカー「TOYOTA FCV PLUS」は、2030年ごろの燃料電池車の在り方をイメージして開発された。燃料電池の発電機能を用いた「24時間働くクルマ」も、FCV PLUSのコンセプトの1つだ。 - CO2排出ゼロの物流拠点、風力発電と燃料電池フォークリフトで実現
岩谷産業と東芝、トヨタ自動車は、CO2排出量の少ない水素のサプライチェーンを京浜臨海部で構築する実証実験を行う。横浜市の風力発電の電力で製造した水素を、横浜市や川崎市に立地する企業の物流拠点で稼働する燃料電池フォークリフトに供給する。2017年度から本格的に実証運用を始める。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.