売上高は合計130兆円、トヨタやホンダなど13社が参画する水素協議会が発足:製造マネジメントニュース
エネルギーや運輸、製造業の世界的な大企業13社が参加する、新エネルギーとしての水素の利用促進を目的とした団体「水素協議会(Hydrogen Council)」が発足した。国内企業からはトヨタ自動車やホンダ、川崎重工業が参加する。13社の売上高の合計額は1兆700万ユーロ(約129兆円)、従業員数の合計は約172万人になる。
2017年1月17日(現地時間)、エネルギーや運輸、製造業の世界的な大企業13社が参加する、新エネルギーとしての水素の利用促進を目的とした団体「水素協議会(Hydrogen Council)」が発足した。
参加企業は、自動車業界からトヨタ自動車、ホンダ、BMWグループ、ダイムラー(Daimler)、現代自動車(Hyundai motor)、重電業界から川崎重工業、アルストム(Alstom)、エネルギー業界からエア・リキード(Air Liquide)、アングロ・アメリカン(Anglo American)、エンジー(Engie)、ロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)、リンデ(Linde)グループ、トタル(Total)。地域、業種の異なる2つの共同議長会社には、トヨタ自動車とエア・リキードが就任する。
スイスのダボスで開催されている世界経済フォーラムの年次総会(ダボス会議)に合わせて、第1回の会合を開いた。会合では13人のCEOならびに会長らが参加し、水素の利用促進によって、2015年のパリ協定で合意された「(気温上昇を)2℃以下に抑える」という目標の達成を目指すことを確認した。
13社の参加企業は、水素や燃料電池の開発と商業化について、現時点で1年当たり約14億ユーロ(約1700億円)と推定される大掛かりな投資をさらに加速させていく方針である。各国政府との連携が進めば、さらに増額される可能性もあるという。
なお、13社の売上高の合計額は1兆700万ユーロ(約129兆円)、従業員数の合計は約172万人になる。
共同議長会社であるエア・リキードCEOのブノワ・ポチエ氏は「水素協議会には、製造業、エネルギーの世界的なリーディングカンパニーが参画し、エネルギー移行に当たって、水素が1つの主要な解であると注目されている理由を明らかにしていく。このエネルギー移行については、発電、家庭向けエネルギーに加えて、モビリティの分野も含まれる。水素を中心に据えてエネルギー移行を果たしていく目標を達成するには、新しい大規模な戦略を作り上げることが必要だ。しかしながら、こうしたことは当協議会だけではできない。協議会メンバーの活動に加えて、大規模なインフラ投資計画など、政府のサポートが必要になる。当協議会が本日行った世界のリーダーへの呼びかけは、水素の可能性にコミットしていくことにより、気候変動抑止への目標を共有し、水素を中心としたエコシステムへと発展させていく大きな原動力になると確信している」と述べた。
同じく共同議長会社であるトヨタ自動車会長の内山田竹志氏は「水素協議会は、水素技術とその便益を世界に示しリーダーシップを果たしていく。当協議会は、協働、協力、相互理解を、政府や産業界から、そして何より重要なこととして、一般の方々から得ていくことを目指す。トヨタ自動車は、燃料電池車の導入などを通じ、自動車業界の中で、環境ならびに関連技術の進捗を先導する役目を果たしてきた。さらに、水素が運輸分野だけでなく産業界全体、ならびにバリューチェーン全体で、低炭素社会への移行を支えていくポテンシャルがあると認識している。水素協議会はこの移行を積極的に推進していく」と語った。
また、ホンダ 代表取締役 副社長 執行役員の倉石誠司氏は「ホンダは、さまざまな電動化技術を開発、推進することで、化石燃料への依存を減らし、持続可能な社会の実現を目指している。2030年をめどに、四輪車の世界販売台数の3分の2を、ゼロエミッションビークルの燃料電池車や電気自動車ならびにプラグインハイブリッド車やハイブリッド車といった電動化技術を搭載した機種に置き換えることを目指す。中でも水素と燃料電池車は、社会のエネルギーシステムの中核をなす可能性を秘めている。燃料電池車技術を開発するリーディングカンパニーの1つとして、ホンダは、世界中で水素社会を発展させる取り組みを強化したいと考えている。このたびの水素協議会の発足を通じて、製造業、エネルギーの世界的リーディングカンパニーが協力することで、この取り組みが加速されると信じている」とコメントした。
川崎重工業も「水素、ヘリウム、天然ガスなどの液化ガスの極低温技術について50年以上の歴史を有しており、水素を安全に、安定的に、そして経済的に取り扱い、大量の水素を世の中で利活用できるようにすることを目指す。2020年には、日豪間の船舶による液化水素の大規模かつ長距離の輸送の実証を始める」と表明している。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ゴム業界の常識への挑戦が生んだ、水素ステーション普及の“立役者”
自社のコア技術やアイデアを活用したイノベーションで、事業刷新や新商品開発などの新たな活路を切り開いた中小製造業を紹介する本連載。今回は水素ステーションに採用された「耐水素用ゴム材料」を開発した高石工業を紹介する。 - トヨタの燃料電池車特許の無償公開に見る、4つの論点
トヨタ自動車は2015年1月6日に燃料電池自動車(FCV)の内外特許約5680件を無償公開すると発表しました。「なぜ特許を無償公開するのか」「なぜ2020年の期限付きなのか」「米テスラ・モーターズのEV関連特許開放との関連性」「ホンダとの協調の可能性」など4つの疑問点について、知財専門家が解説します。 - 量産で先行するトヨタが燃料電池車普及に向けて見せる本気度
ついに量産販売が始まった燃料電池車。普及の端緒についたとはいえ、課題はまだまだ多い。「第11回 国際 水素・燃料電池展(FC EXPO 2015)」の専門技術セミナーに、燃料電池車を手掛ける国内大手自動車メーカー3社の担当者が登壇。本連載では、その講演内容をリポートする。第1回はトヨタ自動車の河合大洋氏による講演だ。 - 水素ステーション開発も手掛けるホンダの「つくる」「つかう」「つながる」
ついに量産販売が始まった燃料電池車。普及の端緒についたとはいえ、課題はまだまだ多い。「第11回 国際 水素・燃料電池展(FC EXPO 2015)」の専門技術セミナーに、燃料電池車を手掛ける国内大手自動車メーカー3社の担当者が登壇。本連載では、その講演内容をリポートする。第2回は本田技術研究所の守谷隆史氏による講演だ。 - 燃料電池スタックのさらなるコスト削減に取り組む日産
ついに量産販売が始まった燃料電池車。普及の端緒についたとはいえ、課題はまだまだ多い。「第11回 国際 水素・燃料電池展(FC EXPO 2015)」の専門技術セミナーに、燃料電池車を手掛ける国内大手自動車メーカー3社の担当者が登壇。本連載では、その講演内容をリポートする。第3回は日産自動車の森春仁氏による講演だ。 - 子ども向けに本気で作った、運転免許なしで乗れる燃料電池車
メガウェブは2015年12月26日から、子どもが自分で運転できる燃料電池車(FCV)「FC-PIUS」を使った走行体験イベントを始める。燃料電池車について正しく理解してもらい、「燃料電池車=水素爆発」といった誤解を解くために、技術者たちが奔走して時間とコストをかけて子ども向けの燃料電池車を開発した。