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子ども向けに本気で作った、運転免許なしで乗れる燃料電池車燃料電池車(1/2 ページ)

メガウェブは2015年12月26日から、子どもが自分で運転できる燃料電池車(FCV)「FC-PIUS」を使った走行体験イベントを始める。燃料電池車について正しく理解してもらい、「燃料電池車=水素爆発」といった誤解を解くために、技術者たちが奔走して時間とコストをかけて子ども向けの燃料電池車を開発した。

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 アムラックストヨタが運営するメガウェブ(東京都江東区)は2015年12月26日から、燃料電池車(FCV)の子ども向け走行体験を始める。運転免許なしでも運転できる本物の燃料電池車「FC-PIUS」を、コンセプトカーの製作などを手掛けるモディーが開発した。量産モデルでも製造コストが高いといわれる燃料電池車をあえて子ども向けに開発したのは「『燃料電池車=水素爆発で走る』という根強い誤解を解き、正しく知ってもらうため」(アムラックストヨタ)だという。燃料電池の仕組みを教える教室や燃料電池車を運転する体験を通じて理解を促し、将来の燃料電池車ユーザーの拡大につなげる。

運転免許なしで運転できる子ども用燃料電池車「FC-PIUS」
運転免許なしで運転できる子ども用燃料電池車「FC-PIUS」 (クリックして拡大)

燃料電池の仕組みを知らない人々と2020年の水素社会

 燃料電池車が走る仕組みを知らない、あるいは誤解している人は少なくない。アムラックストヨタ 運営企画室 商品訴求グループの和田真氏は「特別クルマに詳しくない限り、水素でどうやって燃料電池車が動くか知らない人は多い。水素が爆発して走るという誤解もよく聞く。学校の理科の実験でのイメージが強いのかもしれない」という。

 政府は2020年の東京オリンピック・パラリンピックまでに水素エネルギーシステムを普及させ、水素社会として世界にアピールする方針だ。燃料電池車もその1つ。ただ、水素社会で暮らすであろう当人たちが燃料電池の仕組みを正しく知らないのでは、本当に水素社会を実現できるか疑問符が付く。

 そのため「走行体験の対象とする子どもたちや、その保護者に燃料電池車について理解してもらいたい。また、水素も一般的なのエネルギー源の1つで、燃料電池車は特別なエコカーではないという感覚を持って大人になってもらえれば」(同氏)との狙いで、メガウェブで燃料電池車の走行体験を始める。

 メガウェブには「ライドスタジオ」という子ども向けの走行体験コースがあり、運転免許なしで運転できる車両を使った試乗イベントを実施している。2015年11月の1カ月間で3000人が参加したという人気イベントだ。ライドスタジオでは1人乗りの電気自動車(EV)「PIUS」など複数のタイプの車両で、未就学児から小学生、親子でも運転を体験できる機会を提供してきた。2015年12月26日から、この走行体験用の車両にFC-PIUSが加わる。

子ども用だと侮れない本物の燃料電池車

 モディーが開発したFC-PIUSは、子ども用とはいえ、れっきとした燃料電池車だ。水素タンクと燃料電池セルスタックは、燃料電池の研究開発会社、FC-R&Dが提供した。外観デザインはトヨタ自動車の「MIRAI」に似せているが中身は異なる。トヨタ自動車が無償開放している燃料電池関連の特許技術は使っておらず、開発にはかなりの時間を要したという。

 MIRAIの燃料は圧縮水素だが、FC-PIUSは水素吸蔵合金を使用する。水素吸蔵合金は「金属の粉末に水素を染み込ませたもの。タンクの中に水素を吸ったスポンジがあるイメージ」(和田氏)。トヨタ自動車が2001年に発表した「クルーガー」ベースの燃料電池車「FCHV-3」でも採用されていた方式だ。

 トヨタ自動車は燃料電池車への水素の搭載方法を模索する中で、水素吸蔵合金やメタノール改質型、ガソリン改質型、圧縮水素を比較し、最終的に実用性の高い圧縮水素を選んだ。FC-PIUSでは「圧縮水素よりも安全性が高く、水素タンクが危険物扱いにならない水素吸蔵合金を選んだ」(同氏)という。

車体側方に水素タンクと燃料電池セルスタックを搭載黄色のケースの中に水素タンクが収められている 小さくても本物の燃料電池車 (クリックして拡大)

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