太陽光を青色の光に変換して光触媒の効率アップ、東工大と日産が人工光合成:材料技術
日産自動車は2022年1月20日、人工光合成での光エネルギーの利用効率を高める光の短波長化材料(固体フォトンアップコンバージョン材)を東京工業大学と開発したと発表した。
日産自動車は2022年1月20日、人工光合成での光エネルギーの利用効率を高める光の短波長化材料(固体フォトンアップコンバージョン材)を東京工業大学と開発したと発表した。
開発材料は固体で安定しており、光エネルギーとして利用できない長波長光(緑色から黄緑色の光)を光エネルギーとして利用可能な短波長光(青色の光)に変換する。太陽光強度の数分の一と極めて低強度な光でもレンズなどで集光を行うことなく、理論上限の30%と非常に高い効率で短波長光に変換できるという。
開発材料によって光利用の効率を既存の技術の2倍以上に高め、光触媒によって水を分解して得た水素とCO2を反応させることで、樹脂の原料となるオレフィンなどの合成に活用する。
日産自動車は、こうしたCO2の再資源化を製造工程に取り入れることで、自動車のライフサイクルでのCO2排出量削減につなげたい考えだ。樹脂は、鉄やアルミニウムに次いで生産時のCO2排出量が多い。オレフィンの活用については、サプライヤーと今後検討していく。
これまで使えなかった長波長光を活用する
これまで光触媒で課題となっていたのは、人工光合成に使用できる短波長の光が太陽光に少ししか含まれていない点だ。長波長の光エネルギーも利用できておらず、光触媒の効率には限界があった。
フォトンアップコンバージョン材の開発も進められてきたが、固体ではなく液体が主流だった。封止する必要があるなど取り扱いが難しく、可燃性が高い溶媒を使用することもデメリットとなっていた。そのため、固体化の開発が課題となっていた。
フォトンアップコンバージョン材は、長波長光をキャッチする分子と、青色の光に変換する分子を使う。ただ、青色の光に変換する分子の方が比率が多いため分離しやすく、均質にするのが難しかった。また、従来の製造手法では大きな結晶を得るのが困難で、短波長光への変換効率にも限界があった。
今回の開発材料は分子が均質な結晶を得やすい2種類の分子の比率を検討して生成されている。大量生産へのスケールアップも可能だとしている。固体フォトンアップコンバージョン材としては、世界トップレベルの変換効率を達成できるという。青色の光に変換する分子は、有機ELにも使われる材料だが、長波長光をキャッチする分子には微量ではあるが白金を使用しているため、今後は白金を使わないための改良が研究での課題となる。
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