パナソニックのデバイス事業、FAやEVリレーなどコア4事業で年平均8%成長へ:製造マネジメント インタビュー(3/3 ページ)
パナソニック インダストリーは2022年6月6日、代表取締役 社長執行役員 CEOの坂本真治氏が報道陣の合同インタビューに応じ、同年6月1日に発表した新体制での中期目標(2025年3月期まで)の内容について説明を行った。
2023年度までに中国の11拠点でCO2排出実質ゼロを実現
サステナビリティに向けた取り組みも強化する。パナソニックグループでは2022年1月に環境コンセプト「Panasonic GREEN IMPACT」を発表しており、その一環として2030年度に全事業会社のCO2排出の実質ゼロ化を目指しているが、パナソニック インダストリーでも工場を含む全拠点でのCO2排出量実質ゼロ化を推進する。さらに資源循環型のモノづくりを推進するために、工場廃棄物のリサイクル率99%以上を目指す。また、製品の小型化、軽量化、低損失化、長寿命化を進めることで、製品ライフサイクルとしての環境負荷低減を目指す。
パナソニック インダストリーでは、全世界に55の製造拠点を持つが、その内17拠点で太陽光発電を導入。また生産設備の稼働ロスや歩留まり改善を進める他、環境影響の少ない設備の導入や置き換えを進めることで省エネ化を推進する。これらを推進することで、まず2023年度に中国で全11拠点のCO2排出量実質ゼロ化を実現する。加えて、2025年度までに欧州と北米の5拠点、2027年度までに東南アジアの13拠点、2030年度に日本と台湾の26拠点を順次CO2排出量実質ゼロ化していく計画である。
達成時期に差があるのは主に2つの要因がある。1つは、拠点が担う製造工程で必要とされる電力に違いがあるということだ。もう1つは、創エネや省エネだけでは賄いきれない電力を再生可能エネルギーで調達する必要があるが、国や地域によってその調達力に差があるという状況があるためだ。
一般的な製造業に比べて、材料などのプロセス製造領域の製造工程を抱えているとCO2排出量を低減することは難しいが「製造工程で一番電力を必要とするのは材料プロセス系の前工程だ。その前工程部分の製造拠点は日本に数多くあり、これがビジネス的な競争力の源泉になっている。簡単なのは電力が必要な工程を再生可能エネルギーの調達が容易な国に出すことだが、それではビジネスとしての強みが失われ、本末転倒になる。これらの競争力の源泉となっている工程のCO2排出量実質ゼロ化はすぐには難しく、まずは工場内での創エネや省エネを進めつつ、外部調達の状況などを見極めて体制を構築していく」と坂本氏は述べている。
また、現在のCO2排出量実質ゼロ化の計画では、再生可能エネルギーの外部調達による部分も非常に大きくなるが「クレジットによる取引で行うのは1つの方法だが、それでよいのかというのは考えていかなければならない。解として考えているのは、水素の活用だ。水素についてのさまざまな研究開発はパナソニックグループ全体で進めている。時間軸は2030年度に達成できるものではないかもしれないが、パナソニックグループだけでなく大学や業界として取り組んでいく」と語っている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- コア3事業を2030年までに2.5倍の9000億円に、パナソニックの描くデバイス戦略
パナソニック インダストリー社は2021年11月19日、2022年4月から持ち株会社制への移行を控えた新体制の方向性について、同社社長の坂本真治氏による社長懇談会を開催し、報道陣の合同取材に応じた。 - シェア1位追求と顧客ニーズ追従の2面作戦を徹底、パナソニックの産業用部品事業
パナソニックは2019年11月22日、各事業の状況を紹介する「Panasonic IR Day 2019」を開催。本稿ではその中から、パナソニック インダストリアルソリューションズ社(IS社)の社長である坂本真治氏の説明内容を紹介する。 - パナソニックが新体制で進める原点回帰、スローガンに込めた創業者の90年前の思い
パナソニックグループは2022年4月1日から事業会社制(持ち株会社制)へと移行し、新たな中期経営計画を発表した。これらの新体制への移行を進め、CEO就任から1年がたったパナソニック ホールディングス 代表取締役 社長執行役員 グループCEOの楠見雄規氏が報道陣の合同インタビューに応じ、これまでの取り組みの手応えと新スローガンの狙い、中期経営計画のポイントなどについて語った。 - “現場が自分でできる”を拡大へ、パナソニックが描くFAソリューションの理想像
パナソニックは、「IIFES 2022」(リアル展、2022年1月26〜28日、東京ビッグサイト)に出展し、センサーやコントローラー、モーションなどの豊富な機器ラインアップを組み合わせることで実現できる製造現場課題に対するソリューション提案を行った。大掛かりな仕組みにより大企業でしか実現できない仕組みではなく「現場が自ら解決できる世界」の実現を目指す。 - 低抵抗で高透過率の透明導電フィルム、パナソニックがロールtoロール新工法で開発
パナソニック インダストリー社は2022年2月16日、低抵抗値と高い透過率を実現するメタルメッシュ方式の透明導電フィルムを商品化したと発表した。独自のロールtoロールでの両面一括配線工法を開発したことで可能としている。 - 「パナソニックの持つ多様性を価値に転換する」、新CTOの小川氏が会見
パナソニックの技術トップとして新たに執行役員 CTO、薬事担当に就任した小川立夫氏がオンライン会見を行った。今回の会見は、小川氏のパナソニックにおける経歴や技術開発についての考え方などを説明すもので、具体的な研究開発の方向性などについて踏み込むことはなかったが、その基盤となる考え方を示唆する内容となっていた。