デジタルで横串を通す三菱電機の経営戦略、新たなあるべき姿を打ち出す:製造マネジメントニュース(3/3 ページ)
三菱電機が経営戦略を説明。一連の品質不正問題の原因の一つとして指摘されている組織の縦割り構造を打破するとともに、顧客から得たデータを集めたデジタル空間上に関連する組織が横串を通してつながることで進化し続ける統合ソリューションを提供する「循環型デジタル・エンジニアリング企業」をあるべき姿として打ち出した。
レーザー加工機や高周波光デバイスなどをレジリエント事業へ移行
2021〜2025年度の中期経営計画の進捗では、FA制御システム、空調冷熱システム、ビルシステム、電動化/ADAS、パワーデバイスという5つの重点成長事業への投資は着実に進めていることを強調した。電動化/ADASは国内におけるEV(電気自動車)への取り組みがあまり進んでいないこともあり若干の遅れがあるものの、FA制御システムが力強く伸びており「多少の変化はあるがしっかりと目標達成を目指す」(漆間氏)という。
一方、課題事業に位置付けていたレーザー加工機、高周波光デバイス、ITインフラサービス、無停電電源装置などは、収益力の強化やM&Aにより、安定経営に貢献するレジリエント事業に移行している。
5カ年での投資総額も2兆8000億円から変更はない。M&Aなどに用いる戦略的投資の5000億円のうち、既に2000億円は既に実行していたり、事業分野ごとに具体的な検討を始めたりしている。また、循環型デジタル・エンジニアリング企業におけるデジタル空間、統合ソリューションにおけるデジタルツインの実現にもつながる業務DX(デジタルトランスフォーメーション)では1000億円超を投資する計画だ。
社内の全社業務DXプロジェクトを推進するビジネスイノベーション本部の新たなトップとなるCDO(Chief Digital Officer)として、2022年4月にベネッセホールディングスやパナソニックでCDOを歴任してきた榊原洋氏を招聘(しょうへい)している。漆間氏は「三菱電機に考え方にとどまらない新しい考え方を取り込み、これまでの施策を総合点検しつつ取り組みを加速させたい」と述べる。
イノベーションの創出では、グローバル・ブレインとともにCVCファンドであるMEイノベーションファンドを設立するなどスタートアップ連携を強化していく方針である。知的財産戦略でも、技術資産の可視化、分析だけでなく、社内連携やオープンイノベーションにもつながる「Open Technology Bank」を構築し、全保有特許を網羅する技術マップや、代表技術に関する詳細な特許分布図を公開するなどしている。
三菱電機は、特許資産規模が国内1位、国内特許登録件数が国内1位、国際出願ランキングが世界5位、国内意匠登録件数が国内2位など、世界でも有数の知財創出力を持つ。今後は、AIとソリューションに対応した知財増強を進め、2025年度までにAI比率を現在の2倍の10%、ソリューション比率を同3倍の30%に高める方針である。
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