三菱電機の新社長に専務の漆間啓氏、危急存亡の危機を「変革」で乗り切る:製造マネジメントニュース
三菱電機は、新たな代表執行役 執行役社長、CEOに、代表執行役 専務執行役を務める漆間啓氏が就任したことを発表。鉄道車両用空調装置などの不適切検査をはじめとする品質問題や、労務問題、不正アクセスによる情報流出問題を受けて前任の杉山武史氏が辞職する意向を示しており、漆間氏はその後任となる。
三菱電機は2021年7月28日、同日付で新たな代表執行役 執行役社長、CEOに、代表執行役 専務執行役の漆間啓氏が就任したことを発表した。同月2日に発表した鉄道車両用空調装置などの不適切検査をはじめとする品質問題や、労務問題、不正アクセスによる情報流出問題を受けて前任の杉山武史氏が辞職する意向を示しており、漆間氏はその後任となる。7月28日開催の臨時取締役会で、新社長の選任と併せて新たな執行役体制も決定した。
漆間氏は1959年7月生まれの62歳。1982年3月に早稲田大学商学部を卒業後、同年4月に三菱電機に入社。2006年4月にFAシステム業務部長、2010年4月に国際部次長を歴任し、2011年4月に欧州法人であるMitsubishi Electric Europeの取締役副社長に就任。2012年4月には、同社取締役社長に就任するとともに、国際本部欧州代表も兼任している。2015年4月には本社に戻って常務執行役(FAシステム事業担当)を務めた。その後、2017年4月に常務執行役(社会システム事業担当)、2018年4月に専務執行役(社会システム事業担当)となり、2020年4月に代表執行役、専務執行役(経営企画、関係会社担当)に昇任。2020年6月には取締役に就任した。2021年4月からは、社長就任前の役職である代表執行役、専務執行役(輸出管理、経営企画、関係会社担当)、CSOを務めていた。
杉山氏の辞任により欠員の出る代表執行役には、専務執行役 監査、法務・コンプライアンス、コーポレートコミュニケーション(サステナビリティ、広報、宣伝)担当、CCOの永澤淳氏が就任した。これにより、代表執行役は、漆間氏と新任の永澤氏、2021年4月に代表執行役に就任した専務執行役(輸出管理、ビルシステム事業担当)の松本匡氏の3人が務めることになる。
「1921年の創立以来、危急存亡の危機に直面」
漆間氏は、新社長就任と同日に開いた会見で「1921年の創立以来、危急存亡の危機に直面している。私自身、さまざまな形で経営の一翼を担ってきた立場から深刻に受け止めており、そして社長として負う責任の重さも痛切に感じている」と語る。
そして、この難局において課せられた漆間氏の使命は「変革」であり、そのためにやるべきことは「企業風土の抜本的な改革を推し進め新しい三菱電機グループをつくること」「一連の問題で失われた社会からの信頼を再び取り戻すこと」、これら2つに尽きるとした。
そのために、まずは経営陣一人一人が「変革」の気持ちを持って自らの意識と行動を変える必要があり「社内外のさまざまな言葉に真摯(しんし)に耳を傾ける」と「積極的で透明性の高い情報開示とステークホルダーとの対話の推進」の2つを行うべきこととして挙げた。
漆間氏は「全社一丸となって変革に取り組む。従業員一人一人の心の中に変革の炎をともす。変革に向けて誰もが自発的に取り組む風土を醸成する」と「変革」への意気込みを示した。そして最後に「生まれ変わる当社の姿をしっかり示せるよう、自身で先頭に立って不退転の決意で新しい三菱電機グループの創成を実現する」と述べた。
会見には取締役指名委員長の藪中三十二氏も登壇し、漆間氏の新社長選任の経緯について説明した。藪中氏は「社外から登用する意見もあったが、足元の品質管理の問題を考えると現場に精通しているとともに、従業員全ての信頼を得られるような人材が必要と考え、社内に絞って選考することを決めた」と語る。
そして、2020年度からガバナンス強化に向けて採用した360度評価(部下、同僚、上司の総合評価)に基づいて候補者をリストアップし、5人の社外取締役や社外コンサルタントのインタビューを経て数人の最終候補者を選定。さらにインタビューを重ねて、漆間氏を新社長に選任したという。「品質管理の問題について真相を究明できるのか、膿を出し切れるのか、大きな変革に対する決意、従業員の信頼などの観点から判断した」(藪中氏)という。
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