デジタルで横串を通す三菱電機の経営戦略、新たなあるべき姿を打ち出す:製造マネジメントニュース(2/3 ページ)
三菱電機が経営戦略を説明。一連の品質不正問題の原因の一つとして指摘されている組織の縦割り構造を打破するとともに、顧客から得たデータを集めたデジタル空間上に関連する組織が横串を通してつながることで進化し続ける統合ソリューションを提供する「循環型デジタル・エンジニアリング企業」をあるべき姿として打ち出した。
統合ソリューションの位置付けをより具体化
先述した統合ソリューションについては、これまで三菱電機が得意とするコアコンポーネントと豊富なフィールドナレッジに先進的デジタル技術を掛け合わせるという説明がなされてきた。今回の会見では「システムの提供をライフサイクル全体でサポートするソリューション」(漆間氏)と位置付け、導入時のコンサルティングに始まり、システムエンジニアリング、保守・運用、そして更新提案に向けたコンサルティングを行う。そして統合ソリューションの実現では、リアル空間の情報をデジタル空間に精緻に再現するデジタルツインの活用が重要になるとした。また、統合ソリューションから得られるデータの分析によって、コアコンポーネント、フィールドナレッジ、先進的デジタル技術のさらなる強化を図れる。これらがアルゴリズムとして結晶化しデジタルツインに組み込まれることで、統合ソリューションを強化するサイクルになるという。
現状において、三菱電機の事業の中核を成すのは、さまざまな現場で利用されているコンポーネントであり、これらのコンポーネントが連携したシステムもFA分野の「e-F@ctory」をはじめ一部浸透が始まっている。統合ソリューションとしての展開はまだこれからだ。
また、サステナブル経営の5つの課題領域のうち「カーボンニュートラル」については、2050年度のバリューチェーン全体での温室効果ガス排出量実質ゼロというこれまでの目標に加えて、中期目標として2030年度に工場・オフィスからの温室効果ガス排出量を2013年度比で50%以上削減を明確に掲げた。さらに、カーボンニュートラルに貢献する事業として、エレクトロニクス、デジタル、サーキュラーをテーマにした3つのイノベーション領域での研究開発を加速させる方針である。
さらに、このサステナビリティ経営を実現する新経営体制として、関連する複数の事業本部から成る4つのビジネスエリア(BA)を設定した。各BAオーナーが三菱電機全体の事業を俯瞰してありたい姿を構想し、事業を通じた社会課題解決を加速する狙いがある。品質不正問題への対応となる「品質風土」「組織風土」「ガバナンス」から成る3つの改革の取り組みや、新たに目指す循環型デジタル・エンジニアリング企業としての在り方と同様に、強い縦割り組織の横串を通すための施策といえるだろう。
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