ソニーGが営業利益1兆円突破、イメージセンサーでは新たに2000億円の設備投資:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
ソニーグループは2022年5月10日、2022年3月期(2021年度)の連結業績を発表。会計基準を、2021年度から米国会計基準から国際財務報告基準(IFRS)に変更したため厳密な比較はできないが、売上高、営業利益ともに過去最高を記録する好業績となった。
イメージセンサー向けでは設備投資を2000億円増強
エレクトロニクス製品を展開するエレクトロニクス・プロダクツ&ソリューション(EP&S)分野は、テレビやデジタルカメラにおいて製品ミックスの改善を進めた点と為替の影響により売上高、営業利益ともに成長。十時氏は「コロナ禍の影響によるサプライチェーンの混乱や部材の供給不足で影響を受けたが、きめ細かいサプライチェーンマネジメントにより収益性を維持できた」と語っている。ただ、現在は中国のコロナ禍による強固なロックダウンにより「上海近郊の工場稼働や部品調達で影響を受けている。3カ月ほどの影響を見込んでおり、対応費用として300億円を用意した。このほかにもウクライナとロシアの問題、急速なインフレの影響など、事業環境は近年にない厳しさがあると見ている。収益性維持のためにDX(デジタルトランスフォーメーション)によるオペレーションの効率化などを進める」と十時氏は述べている。
また、2022年度からは同分野を「エンタテインメント・テクノロジー&サービス(ET&S)分野」と改称。「もともと映像、音響、通信技術を中心とした製品群でエンタテインメント体験を提要してきた。クリエイターと未来のエンタテインメントを提供するという方向性を明確にするために名称を変更する」(十時氏)。
CMOSイメージセンサーなどを展開するイメージング&センシング・ソリューション(I&SS)分野では、為替に好影響とデジタルカメラ向け、産業機器向けのイメージセンサーの販売数量増加による増収増益効果があった他、モバイル機器向けイメージセンサーの在庫評価減により営業利益に好影響があり、増収増益となった。十時氏は「顧客基盤の拡大や数量シェアの拡大などに取り組んできたが、中国市場の停滞などもあり厳しい状況が続いてきた。しかし、2022年度以降はイメージセンサーの大型化や高画質化に力を入れる動きが顕著に戻ってきており、さらにミッドレンジも画質を追求する動きが広がっており、さらにシェアを拡大できる余地がある」と述べ、2022年度は2021年度比で37%増と、大きく売り上げが拡大する見通しを示した。
これらの動きに加え、産業向けや車載向けでの成長も予測されていることから、中期経営計画期間(2021〜2023年度)での年平均成長率を20%に上方修正し、設備投資額も7000億円から9000億円に引き上げる計画を示した。十時氏は「収益性改善への取り組みはやや後ろ倒しになるかもしれないが、売り上げを増加する手を打つことで中期的な利益成長を見込む」と語っている。
イメージセンサーの生産能力は、2021年度3月末の時点で、ウエハー投入枚数換算で月産12万2000枚だとしている。これを2022年度第1四半期中に同13万枚に引き上げる計画である。現在の稼働状況は、2022年1〜3月は同12万1000枚ペースで「1月と3月の地震の影響を除くとほぼフル稼働」(十時氏)としている。2022年度第1四半期についても3カ月平均では12万6000枚ペースでほぼフル稼働を見込んでいるとしている。
「円安は総じて損益面でプラス」
最近は急速な円安が「悪い円安」として悪影響を懸念されているが、ソニーグループでは基本的には円安はプラスだという見通しを示す。特に影響が大きいのは、モノづくりを行っている、G&NS分野、ET&S分野、I&SS分野だが、これらの領域については「営業利益への影響の試算値としては、1円の円安に対して米ドルではプラス10億円、ユーロではプラス70億円の影響がある」(十時氏)。
その構造については「G&NS分野、ET&S分野については原材料をUSドルで主に調達している場合が多いため、原材料価格の高騰も含めてこれらを価格に転嫁できない場合は収益性が悪化するという構造になっている。一方で、コストが円、売り上げが米ドルである場合が多いI&SS分野については円安は業績に対して総じてプラスに働く」とソニーグループ 執行役員の早川禎彦氏は述べている。さらに、ユーロに対しては「ユーロで発生するコストは少ないため、対ユーロでの円安は大きくプラスになる」(早川氏)としている。
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