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アクセルスペースが小型衛星量産化へ、宇宙開発を地上のモノづくりに近づける宇宙開発(2/2 ページ)

アクセルスペースは2022年4月26日、小型衛星の製造、運用、廃棄などに必要なプロセスをパッケージ化した「AxelLiner」を開始すると発表した。従来より、安価かつ高速な小型衛星の製造、サービスインを実現する。2023年後半に同サービスで製造した衛星の実証機を打ち上げる予定。

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年間50機以上の生産を目標に

 汎用バスシステムは衛星質量レンジが約130kgまでの「AxelLiner Bus-N」と約200kgまでの「AxelLiner Bus-H」の2タイプを展開する。ミッション部質量比率は50%以上で、設計寿命は7年。通信機はコマンドやテレメトリデータ収集用のS帯、ミッションデータ用のX帯に対応する。将来的にはKa帯と光通信にも対応していく予定。推進系は軌道高度維持、フェージング調整、軌道上回避運用の3つを搭載。年間で50機以上の製造を目指す。


汎用バスシステムのスペック詳細[クリックして拡大] 出所:アクセルスペース

 またAxelLinerには、地球上を広範囲、かつ、高頻度でタスキング撮影できる地球観測プラットフォーム「AxelGlobe」の開発、運用で培った、衛星の自動運用システムも含まれている。衛星の24時間365日運用、管制、監視業務の自動化を実現する。


自動運用システムも含まれる[クリックして拡大] 出所:アクセルスペース

 これらの取り組みで小型衛星開発や運用の低コスト化、高速化を狙う。中村氏は「(開発においては)顧客の細かなニーズに応えづらくなる側面もあるが、その分安く、早く衛星を提供できるようになる。(汎用化という言葉から)技術仕様の標準化を思い浮かべるかもしれないが、当社が目指すのはそうではない。衛星プロジェクト全般における顧客体験(UX)の革新であり、そのためのビジネスフローの標準化だ」と説明する。小型衛星の案件受注からサービスインまでの期間を最短1年未満に収めることを目指す。コストについては搭載するロケットやミッションの内容で変化するため一概に言えないが、衛星単体であれば従来比で半分程度の金額に収まる可能性があるとした。

 中村氏は「宇宙関連の製品づくりだからと言って、特別なものと考える必要はない。“地上のモノづくり”と同様に、安く早く製品を作れる体制を目指す」と意気込みを見せた。

パートナー企業と連携で製造キャパシティー増強狙う

 またアクセルスペースは、小型衛星の量産化体制を整えるため、製造キャパシティー増強を目指し、パートナー企業と連携して「宇宙機製造アライアンス」を構築すると発表した。衛星のシステム設計を担当するアクセルスペースに加えて、製造、調達、輸送、データ連携の4分野で、それぞれ強みを持つ企業を迎え、迅速かつスケーラブルな製造体制を構築する。

 製造分野では由紀ホールディングスが、調達分野ではミスミグループが、輸送分野ではキャリムエンジニアリングが参加する。データ連携分野の参加企業は決定しているものの、現時点では非公開としている。


宇宙機製造アライアンスの構築を進める[クリックして拡大] 出所:アクセルスペース

 宇宙機製造アライアンスを通じて目指す衛星製造の在り方について、アクセルスペース 取締役CTOの宮下直己氏は「発注元と下請けの関係ではなく、迅速な意思決定の下で、各社が強みを生かして製造する体制づくりを進める。データ連携基盤や最新のAI(人工知能)システムなどデジタル技術を活用し、全体最適化を実現するために情報連携の仕方も工夫する。また、システム設計と製造、調達、輸送、データ連携の各分野間で、情報の同時性、透明性、双方向性に配慮して、効率よい製造を進めたい」と語った。

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