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自由空間光通信などエラー発生環境下での完全なデータファイル転送技術を実証:宇宙開発
ソニーコンピュータサイエンス研究所と宇宙航空研究開発機構は、エラー発生環境下での完全なデータファイル転送技術を実証した。地球低軌道や成層圏においても高速、大容量、低消費電力の通信が可能になることを示す成果だ。
ソニーコンピュータサイエンス研究所(ソニーCSL)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2022年1月27日、エラー発生環境下での完全なデータファイル転送技術を実証したと発表した。
実証実験では、成層圏や宇宙といった高高度における自由空間光通信の符号誤り率をシミュレートすべく、一般的なインターネット通信が不可能な環境を実験的にギガビットイーサネット回線上に構築した。
レーザー光読み取り技術を基にしたソニーCSLのFEC(誤り訂正)技術と、JAXAのDTN(遅延途絶耐性ネットワーク)技術を組み合わせた信号処理技術により、データを欠損せずに446Mbpsの通信速度でファイルを転送できた。
この成果は、地球低軌道や成層圏においても高速、大容量、低消費電力の通信が可能になることを示している。将来的に、成層圏無人機に搭載した小型光端末同士の通信サービスや、多数の低軌道衛星を協調して運用する低軌道衛星コンステレーションといった事業への展開が期待される。
自由空間光通信では、レーザー光の受光が不安定であることや、受信機器、環境面から発生するノイズなどを原因とするデジタル信号の符号誤りが多い。そのため、イーサネットやTCP/IPといった一般的なインターネット通信プロトコルを適用できない点が課題となっていた。
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