船舶用エンジンのSCRシステムにコネクテッド機能、スマホ活用で現場運用を容易に:船も「CASE」
ヤンマーパワーテクノロジーは、船舶に搭載するディーゼルエンジンの排ガス浄化装置であるSCR(Selective Catalytic Reduction:選択式触媒還元脱硝装置)システムについて、新たに専用アプリとのコネクテッド機能を搭載して、2022年5月中旬から提供を開始すると発表した。
ヤンマーパワーテクノロジーは2022年4月19日、船舶に搭載するディーゼルエンジンの排ガス浄化装置であるSCR(Selective Catalytic Reduction:選択式触媒還元脱硝装置)システムについて、新たに専用アプリとのコネクテッド機能を搭載して、同年5月中旬から提供を開始すると発表した。
同社が開発、販売しているSCRシステムの制御盤に、スマートフォンと接続可能なUSB端子を新たに追加する。これにより、スマートフォンの専用アプリ「YANMAR SHIPSWEB SMART-LINK」を介して、ディーゼルエンジンとSCRシステムの稼働データをクラウドに蓄積し、性能診断結果を一元管理できるようになる。
スマートフォンがオンライン環境になると、ヤンマーエンジニアリングが提供するクラウドサービス「YANMAR SHIPSWEB」と接続し同社のクラウドにデータが蓄積される。オフライン環境下でも、保存された性能診断結果をアプリで参照したり、定期メンテナンスの通知を受け取ったりできるので、事前に部品や整備の手配が可能となり、安定した運航計画の策定に役立つという。
洋上を航行する船舶ではIT環境が十分に整っておらず、船内での管理工数の削減が課題となっている。ヤンマーパワーテクノロジーでは、船内でもITを活用した効率化を進められるよう、現場で手軽に運用可能なスマートフォンを介したコネクテッド機能の開発、提供に取り組んできた。今回の機能提供はその一環となる。
船舶の排ガス規制として、IMO(国際海事機関)が定める3次規制(IMO3)が2016年1月1日から施行されており、適用される海域も増えている。IMO3は、1次規制比でNOx(窒素酸化物)の排出量を80%削減する必要があり、船舶向けにディーゼルエンジンを製造するヤンマーパワーテクノロジーは尿素水を用いてNOxの大幅な削減を可能にするSCRシステムを開発した。これらディーゼルエンジンとSCRシステムを組み合わせた運用では、使用状況に応じて適切なメンテナンスを行う必要がある。今回のコネクテッド機能を使えば、収集したデータを基に効率的にメンテナンスを実施できるようになる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ヤンマーがトヨタの燃料電池を船に、2023年の市場投入目指す
ヤンマーホールディングス傘下のヤンマーパワーテクノロジーは2021年10月13日、燃料電池システムを搭載した実証試験艇で、高圧での水素充填や大阪湾での試験航行を実施したと発表した。船舶に70MPaの高圧水素充填を行うのは「世界初」(ヤンマーホールディングス)としている。 - 人手不足と高齢化の漁業を救う、「自動着桟システム」の最前線
ヤンマーは、「最大の豊かさを最小の資源で実現する」というテクノロジーコンセプトを掲げ、そのコンセプトを実現する研究開発テーマを定めている。マリン関連の研究開発テーマとしては、海域調査やインフラ点検などに貢献する「ロボティックボート」、1本のジョイスティックだけで操船できるようにする「ジョイスティック操船システム」「自動航行」と「自動着桟」、そして、船舶特有の動揺を抑制する「サスペンションボート」に取り組んでいる。 - ヤンマーの大玉トマト収穫ロボット、2段階認識と独自吸着ハンドで実用化へ
ヤンマーは、「2022国際ロボット展(iREX2022)」のNEDOブースにおいて、開発中の大玉トマト収穫ロボットの試作機を披露した。 - ロボットトラクターで空港の草刈りを自動化、ヤンマーが作業者不足の解消を支援
ヤンマーアグリジャパンは、鹿児島空港へロボットトラクター「YT488A」2台を納入した。有人トラクターに代わり、専用タブレットからの指示で空港内緑地部の草刈り作業と集草作業を自動化し、作業者不足を解消する。 - ヤンマーが環境認識システムを開発、自動車向けと一味違う技術力をアピール
ヤンマーホールディングスは、「ET&IoT 2021」において「ヤンマー環境認識システム」を披露した。同社が農業機械や建設機械向けに開発している技術で、屋外をはじめとするさまざまな環境でAIによる画像認識が可能なことを特徴とする。 - 養殖業の作業効率化に貢献、画像認識技術を用いた自動魚数カウントシステム
ヤンマー舶用システムは、養殖マグロの計数作業の省力化に貢献するため、画像認識技術を用いた「自動魚数カウントシステム」を発表した。水中カメラ、船内モニター、画像処理PC、専用ソフトウェアで構成する。