カーボンニュートラルは製造業のOSに、IVIが考える具体的手法と実現のカギ:IVI公開シンポジウム2022春(1)(2/2 ページ)
IVIは2022年3月10〜11日、リアルとオンラインのハイブリッドで「IVI公開シンポジウム2022-Spring-」を開催した。今回はその中から、IVI 理事長の西岡靖之氏による講演「カーボンニュートラルは製造業のOSになる〜新たなゲームチェンジは何を意味するのか?」の内容を紹介する。
サプライチェーンでの温室効果ガス管理に必要な企業間データ連携
さらに西岡氏は「これらの複雑なデータを収集し、共有を進めていくのを人手で行うのは不可能だ。必然的にデジタル技術を活用することになる」とし、スコープ3への取り組みを具体的に製造業に落とし込む仕組みの1つとして、IVIが2019年から取り組んできた異種環境間でのデータ連携を実現する企業間オープン連携フレームワーク「コネクテッドインダストリーズオープンフレームワーク(CIOF)」を紹介した。
CIOFは製造現場内で乱立するさまざまなデータフォーマット間の連携を実現するために、既存のプラットフォーム内のシステムやデータ設定などを大きく改変することなく、容易にデータ連携を実現する汎用的なプラットフォームである。2018年12月に仕様公開され、2019年3月に第1版が正式公開。2022年度からは正式にリリースを開始した。新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)から2019〜2021年度まで3カ年の受託事業として推進しており、IVIが幹事となりDMG森精機、ジェイテクト、三菱電機、安川電機、SCSK、ビジネスエンジニアリング、アプストウェブなどが参画している。
西岡氏は「IVIのこれまでの活動でもあるように、個々の企業の中で温室効果ガス排出量を算出する仕組みは既にある。ただ、サプライチェーンの関係性の中で企業間で情報共有を進めていくとなると、取引の信頼性が必要になる。破ったもの勝ちにならずにデータの信頼をどう確保するのかが重要だが、その部分でCIOFが役立つ。集めたデータを、信頼性を確保しつつ負担小さく共有するという点でCIOFが貢献する」と考えを述べる。
個社ではなくコミュニティーを発展させる思想
こうした具体的な仕組みの一方で、西岡氏は製造業がカーボンニュートラル化を推進しリードしていくために重要なポイントとして「思い」の重要性を訴える。「こうした地球環境への企業の取り組みは以前から存在したが持続的な形で続いてこなかった。企業間で温室効果ガス排出量を共有するようなカーボンニュートラル化への取り組みが直接的に利益を生むわけではない。そこをコストと見るか、サプライチェーンを構成する共同体が新たな目的に向かって進むために必要な投資だと見るのかで大きく変わってくる。コストとして見た場合は補助金頼みで長くは続かない。一方で共同体としての進化を考えた場合、新しいビジネスルールとして機能するようになり、定着する」と西岡氏は考えを述べている。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- 製造業はGAFAの下請けとなるのか、とり得る選択肢
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加するIndustrial Value Chain Initiative(IVI)は2021年3月11〜12日、オンラインで「IVI公開シンポジウム2021-Spring-」を開催した。今回はその中から、IVI 理事長の西岡靖之氏による講演「日本の製造業はGAFAの下請けになってしまうのか?〜ソフトウェアの力と組織知能〜」の内容を紹介する。 - さまざまな製造IoTデータを容易に連携、CIOFが2022年に商用化へ
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加するIndustrial Value Chain Initiative(IVI)は2021年3月11〜12日、オンラインで「IVI公開シンポジウム2021-Spring-」を開催した。今回はその中から、IVIが取り組む異種環境間でのデータ連携を実現する「企業間オープン連携フレームワーク」への取り組みについて紹介する。 - サプライチェーン強靭化でまず社内をつなぐ、企業内データ連携を進めるPSLXの狙い
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加するIndustrial Value Chain Initiative(IVI)は2021年3月11〜12日、オンラインで「IVI公開シンポジウム2021-Spring-」を開催した。今回はその中から、今回はその中から、2021年度の新たな取り組みとして開始する「PSLX(Product and Service Lifecycle Transformation)」について紹介する。 - IVIが「スマート工場モデル」を公開、先行する独米に対し“日本式”を提案
「つながる工場」実現に向け、製造業、製造機械メーカー、ITベンダーなどが参加するIndustrial Value Chain Initiative(IVI)は、日本のモノづくりの良さを織り込んだスマート工場の基本モデル「Industrial Value Chain Reference Architecture (IVRA)」を公開した。 - なぜIVIは新たなスマート工場モデルを打ち出すのか
「緩やかな標準」を掲げ、日本版スマート工場の実現を目指すIVI。2016年12月には新たにスマート工場の基本モデル「IVRA」を打ち出した。その狙いは何なのだろうか。IVI理事長の 西岡靖之氏に話を聞いた。 - スマート工場は“分断”が課題、カギは「データ取得」を前提としたツールの充実
工場のスマート化への取り組みは2020年も広がりを見せているが、成果を生み出せているところはまだまだ少ない状況だ。その中で、先行企業と停滞企業の“分断”が進んでいる。新型コロナウイルス感染症(COVID−19)対応なども含めて2021年もスマート工場化への取り組みは加速する見込みだが、この“分断”を解消するような動きが広がる見込みだ。 - スマートファクトリー化がなぜこれほど難しいのか、その整理の第一歩
インダストリー4.0やスマートファクトリー化が注目されてから既に5年以上が経過しています。積極的な取り組みを進める製造業がさまざまな実績を残していっているのにかかわらず、取り組みの意欲がすっかり下がってしまった企業も多く存在し2極化が進んでいるように感じています。そこであらためてスマートファクトリーについての考え方を整理し、分かりやすく紹介する。