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広がる遠隔操作ロボットの世界、川崎重工とソニー、オカムラ、ホンダなどが本格化産業用ロボット(3/3 ページ)

慢性的な人手不足や、コロナ禍による人依存度の低減などから、製造現場でより幅広いロボットの活用が進んでいる。その中で、ロボットによる作業の内、完全自動化が難しい部分だけを人の遠隔操作で補う「遠隔操作ロボット」への取り組みが本格化しつつある。

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人の動きを完全再現するアバターロボットを出展したホンダ

 ホンダは人の動きを完全再現し、遠隔から人がその場にいるかのように操作を行える「Hondaアバターロボット」を出展した。

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ホンダのアバターロボット。人がHMDや多指グローブを通じてロボットの情報を得て、ロボットを操作するデモンストレーションを行った[クリックで拡大]

 アバターロボットは人型の双腕ロボットで、ハンド部には4本の指を備えた独自開発の多指ハンドを装着。動滑車の原理を利用しモーター出力に対して高いトルクを実現し、指先力は50Nとしている。ハンド部表皮には224chの感圧センサーを採用したことに加え、6軸力センサーを搭載することで接触状況を高精度で把握できるようにした。これらにより複雑な形状のものや軽いものでも優しくつかむことを可能としている。

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独自開発した多指ハンド[クリックで拡大]

 遠隔操作では、離れた場所にいる人がHMDによりロボットのカメラ映像を見ながら、両手に装着した指ごとの操作が可能なグローブによって行う。ただ、人の動きそのものをロボットの動きに反映させるだけでは、ネットワークの遅延や位置認識のずれなどもあり、うまく動作を行えない場合もある。これをAIでサポートする技術を加えていることが特徴だ。

 人の目や手や指の動きをから意図を推定し、その意図に応じて、ロボットの動作を補正する。例えば、コップをつかむ動きをする際に、人の動きをロボットでそのまま再現しても、コップがつかめない場合もあるが、目や手や指の動きをデータ化し学習した成果により「コップをつかみたい」という意図を把握。その意図に沿った形でロボットの動作プログラムを補正し、把持位置やトルクの修正を自動で行うようなサポートを行う。今後は、2023年度中に技術実証を開始する予定で2030年代の実用化を目指しているという。

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AIサポートシステムの仕組み[クリックで拡大]

 これらのようにロボットの遠隔操作に関する技術はさまざまな形で広がりを見せている。ロボットは人の作業を自動化する期待から活用されることが多いが、全てをロボットで自動化しようとすると技術面でも費用対効果面でもまだまだ導入できる部分が限られる。人の繊細な作業が優れている場面も多く、人の判断や作業支援などが必要な部分も数多く残されている。一方で労働人口不足などで全てを人に担わせるのは難しくなりつつあり、「人が行った方が良い部分」だけを切り出して、その部分をより効率的に行えるようにする仕組みが求められている。

 ネットワークの高容量化や遅延の問題、認識精度や作業精度の問題などまだまだ発展の過程にある段階だが、距離を越えて人とロボットが協働できる仕組みとして遠隔作業ロボットは今後の活用に期待が高まっている。

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