機械要素の基礎〜ねじの製図について〜:3D CADとJIS製図(10)(2/2 ページ)
連載「3D CADとJIS製図の基礎」では、“3D CAD運用が当たり前になりつつある今、どのように設計力を高めていけばよいのか”をテーマに、JIS製図を意識した正しい設計/製図力に基づく3D CAD活用について解説する。第10回では機械要素の描き方をテーマに「ねじ」の製図を取り上げる。
ねじの製図
では、ねじの実形状を2D図面で描く場合はどうすべきでしょうか。3D CADであればまだしも、2D CADや手描きとなれば非常に手間が掛かりますし、図7のように理解しやすいものにはなりません。
そこで、簡略化された図示方法が「JIS B 0002-1」に規定されています。
JISの図を例に、SOLIDWORKSで3D部品図と2D部品図を作成します。おねじ部品の場合、図1のように、ねじ山フィーチャーを使用すると、単純化したねじ山の2D図面を作製できないため、挿入(Insert)→アノテートアイテム(Annotations)→ねじ山(Cosmetic Thread)の順でねじの定義を設定します。
なお、図8のように“ねじのイメージ”を表示するには、3Dパーツのフィーチャーマネジメントツリーから「アノテートアイテム」を選択し、そのプロパティで「シェイディングされたねじ山」にチェックを入れます(図9)。
図10にあるように、ねじ山の頂は外形線として太い実線、ねじの谷底の線は細い実線で表されます。また、ねじの端面から見た図(例:図10の右側面図)のように、円周の4分の3にほぼ等しい円の一部で表し、できれば右上方側を四分円開けることが望ましいとされています。また、ねじの端面から見た図では面取りによって見える線を省略します。
なお、JISでは“ねじ部の境界が見える場合には太い実線で表す”と「3.2.5項 ねじ部の長さの境界」に記載されていますが、筆者のモデルの例では、図10に示すように、線のフォントとして設定された線種となってしまい、太い実線では表されていません。
ねじ部品の断面図にハッチングする場合は“ねじの山の頂を示す線まで伸ばして描く”とされています。図11、図12にその例を示しました。
ねじ穴作成の場合、SOLIDWORKSでは「穴ウィザード」により作成すると便利です。おねじ部品と同様に、ねじ部をシェイディング表示することもできます。2D部品図を描く場合、「断面図作成機能」においても図12で示すように、ねじ穴の断面図ではねじ山の頂までハッチングが描かれています。また、隠れたねじを描く場合、山の頂および谷底を細い破線で表しています。これらは、SOLIDWORKSのデフォルトの機能をそのまま利用して図面化しています。
図12の断面図で、ねじ穴部分を拡大します(図13)。おねじ、めねじの加工を行う場合、ねじが加工されていない部分が残ります。これを「不完全ねじ部」といいます。筆者も2D図面を描く際に、これをどうすればよいか悩みましたが、JISには“不完全ねじ部は省略可能であれば表さなくてもよい”と記載されています。
機能上これを表す必要がない場合には省略が可能です。なお、SOLIDWORKSの穴ウィザードでは、ねじ穴サイズ、ねじ山の深さ、下穴ドリルの径、下穴ドリルの深さを設定しますが、図面化においては不完全ねじ部は作成されません。
なお、図12の場合、前回解説した「穴寸法」は図14のように表示できます。
ねじに関する解説はまだまだあります。次回も、ねじの解説を取り上げつつ、他の機械要素についても説明します。お楽しみに! (次回へ続く)
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