2D図面の“一義性”を考える【その7】寸法補助記号と穴寸法の表し方:3D CADとJIS製図(9)(1/3 ページ)
連載「3D CADとJIS製図の基礎」では、“3D CAD運用が当たり前になりつつある今、どのように設計力を高めていけばよいのか”をテーマに、JIS製図を意識した正しい設計/製図力に基づく3D CAD活用について解説する。第9回も引き続き「寸法補助記号」の残りを紹介しつつ、「穴寸法」の表し方を取り上げる。
2D図面の作製において、図形の大きさを定義する「寸法」の記入について引き続き取り上げていきます。
2D図面における正しい図面記入方式を知ることは、3D CADで作成した3Dの形状モデルに寸法や注記、数量などの情報を付加した「3DAモデル(3D Annotated Models/3D製品情報付加モデル)」を活用する上でも重要です。
「3D単独図」が3Dデータ上に幾何公差や仕上げ記号といった注釈および表面処理などの注記を付加し、3Dデータのみで全てを表現するのに対して、3DAモデルでは、部品名称、部品番号、使用個数、箇条書き注記といったモデル管理情報が加えられた“製品情報のデータセット”として定義され、そこには2D図面も含まれます。
筆者の見解ですが、3D CADベンダーが「MBD(Model Based Definition/モデルベース定義)」といっている製品は、この3DAに該当します。3DAモデルは、3D CADベンダーによらないものとして、必要な製品情報を付加できる標準的な考え方であり、今後この考え方は主流になっていくことでしょう。
こうした流れも「3D正」といわれる、“2D図面と3D図面に設計情報の違いがある場合には3Dデータが正しい”とする考え方に基づくものであり、「正しい図面記入方式を理解すること」は、3D単独図において寸法記入を行う場合でも、3DAモデルとして2D図面を情報として付加する場合でも重要となります。
さて、今回は前回解説し切れなかった「寸法補助記号」の残りと「穴寸法」について紹介します。
1.正方形の辺「□」
正方形を表す際、「□(“かく”と呼ぶ)」の記号を使用します。これは「JIS B 0001:機械製図:11.6.5 正方形の辺の表し方」に規定されています。ちなみに、JIS B 0001:機械製図は2019年に改正されており、正方形の辺(□)についてもその使い方が見直されています。以下、□の記入方法について見ていきます。
正方形の辺の表し方
対象とする部分の断面が正方形であるとき、その形を図に表さないで、正方形であることを表す場合には、その辺の長さを表す寸法数値の前に、寸法数値と同じ大きさで、正方形の一辺であることを示す記号□を記入します(図1)。
正方形の表し方
正方形を正面から見た場合のように、正方形が図に表れる場合には、両辺の寸法を記入するか、または正方形であることを示す記号□を一辺に記入します(図2)。なお、旧JISでは「両辺に寸法を記入する」とされていましたが、2019年の改正により「□を使用してもよい」とされました。
2.円弧の長さの表し方「⌒」
円弧を表す際、「⌒(”えんこ”と呼ぶ)」の記号を使用します。これは「JIS B 0001:11.6.7 弦及び円弧の長さの表し方」に規定されています。
弦の長さの表し方
弦の長さは、弦に直角に寸法補助線を引き、弦に平行な寸法線を用いて表します(図3)。
円弧の長さの表し方(1)
弦の場合と同様な寸法補助線を引き、その円弧と同心の円弧を寸法線として引き、寸法数値の前または上に円弧の長さの記号(⌒)を付けます。なお、旧JISでは「寸法数値の前だけに⌒を付ける」ことが規定されていましたが、2019年の改正により、「寸法数値の前または上のどちらでもよい」ということになりました。
筆者が普段使用している「SOLIDWORKS」の2D図面では、図4のように寸法値の上に円弧の長さ記号を付けた表し方となります。その方法ですが、SOLIDWORKS 2D図面作成時に「スマート寸法」を選び、円弧の曲線を選択した後に[Ctrl]キーを押しながら円弧の端点2点を選択すると、図4のように円弧の記号とともに寸法を表示できます。
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