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2D図面の“一義性”を考える【その6】寸法数値/配置と寸法補助記号3D CADとJIS製図(8)(1/4 ページ)

連載「3D CADとJIS製図の基礎」では、“3D CAD運用が当たり前になりつつある今、どのように設計力を高めていけばよいのか”をテーマに、JIS製図を意識した正しい設計/製図力に基づく3D CAD活用について解説する。第8回は、前回解説できなかった「寸法数値・寸法配置」の部分と「寸法補助記号」を取り上げる。

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 前回から、2D図面の作製において図形の大きさを定義する「寸法」の記入について取り上げています。

 あらためてJIS要覧を読んでみると、これまで普通に製図を行ってきたことでも「なるほど!」と思うことがたびたびあります。たまに目を通してみることをオススメします。

 製図において大切なのは「2D CAD運用のためのテクニックではなく、正しい図面記入方式を理解すること」です。3D CAD上での寸法表示であっても、正しい図面記入方式の考え方は同じです。

 今回は、前回解説し切れなかった「寸法数値/寸法配置」の部分と「寸法補助記号」について紹介します。

⇒「連載バックナンバー」はこちら

1.寸法数値/寸法配置

 まずは、JISに記載されている寸法数値(寸法値)について確認してみましょう。

11.4.寸法数値(※JIS B 0001:2019 機械製図より抜粋/編集)
 寸法数値は、次によって指示します。

  • a)長さの寸法数値は、通常はミリメートル(mm)の単位で記入し、単位記号は付けません
  • b)角度寸法の数値は、一般に度の単位で記入し、必要がある場合には、分および秒を併用することもできます。度、分および秒を表すには、数字の右肩にそれぞれ単位記号「°」(度)、「」(分)、「」(秒)を記入します。角度寸法の数値をラジアンの単位で記入する場合には、その単位記号として「rad」を記入します
  • c)寸法数値の小数点は「.」を付け、数字の間を適切にあけて、その中間に大きめに書きます。また、寸法数値の桁数が多い場合でも桁数の間の「,」は付けません※注記:ISO規格では、小数点に「,」を使用しています
  • d)寸法記入は、累進寸法記入法の場合を除き、次によります
    • d−1)寸法数値は、水平方向の寸法線に対しては図面の下辺から、垂直方向の寸法線に対しては図面の右辺から読めるように指示します。斜め方向の寸法線上の数値は、その寸法線に平行に記入します(図1)。角度寸法の数値は、図示のように記入します(図5
    • d−2)寸法線を中断しないで寸法数値を記入する場合には、寸法線に沿ってその上側にわずかに離して寸法線のほぼ中央に記入します。また、寸法数値を記載するスペースが確保できない場合に限り、寸法線を中断し、中断した部分に寸法数値を記入します。このとき中断する部分は、一般に寸法線のほぼ中央に記入します。寸法線を中断する記入方法と中断しない記入方法は、できる限り1つの図面内で混用しない方がよいでしょう(図2
    • d−3)寸法数値は、垂直線に対し左上から右下に向かい約30度以下の角度をなす範囲には、寸法の記入を避けます。ただし、図形の関係で記入しなければならない場合には、その場所に応じて、紛らわしくないように記入します
  • e)寸法数値を表す数字は、図面に描いた線で分割されない位置に指示することがよいとされます
  • f)寸法数値は、図面に描いた線に重ねて記入してはいけません。ただし、やむを得ない場合には、引出線参照線とを用いて記入します
  • g)寸法数値は、寸法線の交わらない箇所に記入します
  • h)寸法補助線を引いて記入する直径の寸法が対称中心線の方向に幾つも並ぶ場合には、各寸法線はなるべく同じ間隔に引き、小さい寸法を内側に、大きい寸法を外側にして寸法数値をそろえて記入します。また、紙面の都合で寸法線の間隔が狭い場合には、寸法数値を対称中心線の両側に交互に記入することも可能です(図6
  • i)寸法線が長いために、その中央に寸法数値を記入すると分かりにくくなる場合には、いずれか一方の端末記号の近くに片寄せて記入ができます(図7
  • j)寸法数値の代わりに、文字記号の使用ができます。この場合は、その数値を別に表示します

 JISに書かれている内容は、要するに「見やすい図面であること」の一言に尽きます。見やすい図面を作製することによって、はじめて「図面の一義性」を得ることができるのです。

 なお、JIS規格における寸法値の記入方法は、使用するCADの機能に依存します。以降、特筆すべき内容について、筆者が普段使用している「SOLIDWORKS」の設定方法とともに紹介していきます。

d−1)斜めの図形への寸法記入方法

 図1は、斜めの形状に対して平行な寸法線と寸法値を記入した例となります。

斜めの図形と寸法線/寸法値
図1 斜めの図形と寸法線/寸法値[クリックで拡大]

d−2)寸法線を中断しない記入方法/中断する記入方法

 寸法線と寸法位置の関係(図2)は、SOLIDWORKSの場合、図3のドキュメントプロパティから変更可能です。

寸法線と寸法値の位置
図2 寸法線と寸法値の位置[クリックで拡大]
ドキュメントプロパティの寸法値位置の設定
図3 ドキュメントプロパティの寸法値位置の設定

補足:理論的に正確な寸法

 図2のように、寸法値を□で囲んだものは、「JIS Z 8114:1999」に規定された「理論的に正確な寸法」といわれるもので、「バラつきのない図面上の理想的な寸法値」であり、「公差域をどの位置に設定するのかという基準」を意味しています。

 この理論的に正確な寸法に関して、SOLIDWORKSでは寸法配置プロパティで「基準寸法」を選択することによって、寸法値を□で囲めるようになります。

SOLIDWORKSの寸法配置のプロパティ
図4 SOLIDWORKSの寸法配置のプロパティ[クリックで拡大]

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