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2D図面の“一義性”を考える【その5】大きさを定義する寸法(サイズ)の記入3D CADとJIS製図(7)(1/4 ページ)

連載「3D CADとJIS製図の基礎」では、“3D CAD運用が当たり前になりつつある今、どのように設計力を高めていけばよいのか”をテーマに、JIS製図を意識した正しい設計/製図力に基づく3D CAD活用について解説する。第7回は、前回の続きとして、断面図を描く上での注意事項を紹介するとともに、寸法(サイズ)記入の方法を詳しく取り上げる。

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 これまで、3D CADを使用して2D図面を作製していくために必要な知識として、三面図から始まり、補助投影図、断面図と図形の描き方について解説してきました。今回は、前回の続きとして、断面図を描く上での注意事項を説明するとともに、寸法(サイズ)の記入について取り上げます。これにより、2D図面は図形だけでなく、大きさの定義を持つことができます。

⇒「連載バックナンバー」はこちら

1.断面図(続き)

 前回説明した通り、断面図の定義については、「JIS B 0001:2019」に記述があります。その中から、断面図を描く際の注意事項について解説します。

(1)ハッチング

 断面の切り口には、等間隔かつ平行な細い斜線を描きます。この線のことを「ハッチング(hatching)」といいます。ハッチングについて、「JIS B 001:2019」には次のような記述があります。

(※JIS B 0001:2019 機械製図より抜粋/編集)

  • d)断面の切り口を示すために、ハッチングを施す場合には、切り口は次による
    ※注記:ISO 128-50では、断面および切り口にはハッチングを施すとの規定している。
    • 1)ハッチングは、細い実線で、主たる中心線に対して45度に施すのがよい
    • 2)断面図に材料などを表示するため、特殊なハッチングを施してもよい。その場合には、その意味を図面中にはっきりと指示するか、該当規格を引用して示す
    • 3)同じ切断面上に現れる同一部品の切り口には、同一のハッチングを施す。ただし、階段状の切断面の各段に現れる部分を区別する必要がある場合には、ハッチングをずらしてもよい

 図1では、断面図の規定として、断面の向こう側に見える外形線を実線として描き、隠れ線は描いていません。ハッチングの線は45度の平行な細い斜線で描いています。

基本的なハッチングについて
図1 基本的なハッチングについて[クリックで拡大]

 筆者が普段使用している「SOLIDWORKS」では、図2に示したドキュメントプロパティでハッチングの設定が可能です。また、ここにはANSI(アメリカ規格協会)やISO(国際標準化機構)で規定されている多くのハッチングパターンが登録されています。

SOLIDWORKSでのハッチングの設定
図2 SOLIDWORKSでのハッチングの設定[クリックで拡大]
  • SOLIDWORKSのハッチングパターン
    • 合金鋼(Alloyed steel)
    • 炭素鋼(Carbon steel)
    • 鉄(鋳造)(Cast iron)
    • エラストマーとゴム(Elastomers and rubbers)
    • 重金属(Heavy metals)
    • 軽合金(Light alloys)
    • 金属(Metals)
    • プラスチック
    • 固体
    • 熱可塑性材料(Thermoplastics)
    • 熱硬化性プラスチック(Thermoset plastics)

(2)切断しないもの

 断面図として表す際、

  • ボルト
  • ナット
  • 長手方向に切断しないもの

などは、切断すると理解しにくくなってしまいます。「JIS B001:2019」を確認してみましょう。

10.2 断面図(※JIS B 0001:2019 機械製図より抜粋/編集)
10.2.1 一般事項
 一般事項は、次による。

  • b)切断したために理解を妨げるもの(例1)、または切断しても意味がないもの(例2)は、長手方向に切断しない
    • 例1:アーム、歯車のリブ、歯車の歯
    • 例2:軸、ピン、ボルト、ナット、座金、小ねじ、リベット、キー、鋼球、円筒ころ
ハッチングの描き方と切断しない要素
図3 ハッチングの描き方と切断しない要素[クリックで拡大]
3D CADによるアセンブリ断面
図4 3D CADによるアセンブリ断面[クリックで拡大]

 比較のために、3D CADによる断面図(図4)を作製しましたが、視認性に関してはこちらの方が優れているといえるでしょう。ただ、前回も解説しましたが、3D CAD/2D CADの連携では、その機能がJISに適合していないこともありますので注意が必要です。重要なのは「一義性のある図面」「分かりやすい図面」であることなので、これを前提にうまく運用する必要があります。

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