投影図のウソ・ホントをかぎ分けよう:演習系山田式 機械製図のウソ・ホント(1)
職場で慣れ親しんだ製図作法さえ、実は間違っていることがある。今回は、投影図に関する間違い探しの出題だ。
普段、機械設計者の皆さんは何げなく図面を描いていることと思います。それは、過去の図面をまねして、会社の作法を守るよう身に付けた技能です。企業ごとに解釈を変えて独自の製図作法がはびこっています。大企業でさえグループ会社間での整合性はもとより、担当者間でも整合されていない場合があり、驚きを覚えることがあります。
そう、事実上「個人任せの図面が日本のものづくりに使われている」といっても過言ではありません。
機械製図作法の原点といえるものが、日本工業規格(JIS)が定める「JIS製図」です。近年このJIS製図は、ISO(国際標準化機構)に準拠する形で改定されています。「JIS」とは「Japanese Industrial Standards(日本工業規格)」の略称で、工業標準化法に基づきすべての工業製品について定められる日本の国家規格のことです。「JIS B 0001」に定められるのが、いわゆるJIS製図です。
そこで、改定以前のJIS製図から最新JIS製図(JIS B 0001:2000が最新。2008年3月現在)まで、誰もがあいまいなまま使っている製図の作法も交えながら、簡単な図面例を使って連載で解説します。
今回のお題は“投影図についてのウソ・ホント”
機械製図に使う投影図は、常識的に間違っていなければ特に問題はないでしょう。しかし、JIS製図には、「あいまいさや勘違いをなくして、より分かりやすくしてあげよう」という意図があります。
あなたの製図作法の中にも、もしかして常識で考えればおかしいことがあるかもしれません。
何が正しいのか分からないまま自分なりに判断した投影図を採用しても、設計上、加工上特に実害はありません。しかし自分の無知ゆえ、JIS製図を忠実に守った図面に対して文句をいってしまっては、自分自身が恥をかくことになります。「機械製図のウソ・ホント」シリーズで機械設計技術者としての知識向上に努めてください。
豆知識:投影図
JIS投影法には第三角法と第一角法のどちらも記載があります。JISでは、統一を図るために投影法は第三角法を使って説明されています。日本やアメリカは基本的に第三角法を用い、ヨーロッパは第一角法を用いますので、海外メーカーと取引を行う場合は注意が必要です。
次回までの宿題 ― 【問題1】
この軸は、端部におねじを有し、太い軸側にキー溝と2面幅を持ちます。図面化するに当たり、寸法線を記入する準備段階として、まず3次元CADにあるモデルデータをドラフティングモード(もしくは2次元CAD)内にあらかじめ用意した図面枠上に投影図として取り込み、簡単な注記を入れました。さあ、投影図としてどこが誤っているのか指摘してください!
※本部品は製図の解説用に作ったものであり、実際に機能する部品ではありません。
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次回は、解答解説と新しい図面を見ていただき、投影図の作法について知識を得て実務レベルに展開していただきたいと思います。(次回に続く)
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