ママさん設計者がやさしく教える「部品図の描き方超入門」:まずは自分の手で描いてみる(1/3 ページ)
ファブレスメーカーのママさん設計者が製図初心者向けに、「部品図」の描き方を分かりやすく解説。机上の学習も大切だが、実際に自分の手で図面を描いてみることが何よりも大切だ!
このところ、設計現場と部品加工現場の情報伝達手段であった「図面」の代わりに、「3次元CADデータ」の社内共有によるモノづくりがガンガン進んでいます。これは3次元CADデータが単なる図面の代替ではなく、製造現場の効率化に直接役立つからです。
ところが、利点の多いはずの3次元CADデータも、数値制御装置(CNC)がない汎用機械の現場ではあまり活用されていません。それどころか「図面がなければ加工できない」状況なのです。このように、3次元CADデータだけでは情報が不足してしまい、それを補うために2次元の図面が活用されるケースはまだまだ多く、部品図を作成する製図者の仕事は途絶える気配がありません。
とはいえ、ほとんどの3次元CADには、3次元モデルから2次元図面を作成する機能が備わっているため、作図作業はかなり楽になってきていると思います。ですから製図者の役割というのは、3次元モデルを図面化しただけでは足りない情報を図面上に描き加えて、パーフェクトな「情報伝達手段」に仕上げることなのです。そのためには、製図の基礎に加えて、加工方法についてもある程度心得ておく必要があります。
そもそも部品図とは、「立体を2次元化することで、部品加工に必要な情報を加工者にもれなく伝えるための手段」です。製図者は、設計意図を正しく理解した上で、正確で分かりやすい図面を描くことに努めなくてはなりません。どこに出しても誤解されない部品図を描くには、「製図規格」と呼ばれるルールを踏まえることが必要なのですが、未経験のまま職務について、実務経験を重ねるうちにいつの間にか製図規格が身に付いていた……という方も多いのではないでしょうか。なにせ加工現場では「製図規格を守って描かれた図面なのか」よりも、「どんな材料を使って、どんな寸法のどんな形状の部品を加工するのか」という情報の方がはるかに重要なので、「製図のよく分からないところは加工者が現場で教えてくれる」ことが往々にしてあるのです。
ですから、製図初心者さんは「自分の使命とは、設計意図を加工者に正確に伝えることなのだ!」と肝に銘じた上で、製図規格にとらわれ過ぎないで、まず加工者の要求を満たすことを考えましょう。そして、「描く」という動作は気付きのきっかけになったり、思考の整理にもなったりしますから、机上の学習よりも“自分の手で図面を描いてみる”ことはとても大事だと思います。「習うより慣れよ」ですね。
では、「加工に必要な情報」とは具体的に何でしょうか? 加工者の立場から見ると、最低限このくらいの情報はほしいところです。
- 形状、寸法(言うまでもない……)
- 材料の種類(「鉄」「アルミ」という大ざっぱな表現ではなく、材料記号で)
- 許容差(図面上の寸法と実物の仕上がり寸法との許される最大値と最小値)
- 表面粗さ(加工後の肌の状態)
- 表面処理の種類(どんなメッキや塗装をするのか。膜厚はどのくらいか)
この中で特に気を使うべきは、「1.形状、寸法」と「3.許容差」です。どちらにもちょっとした落とし穴が潜んでいるのでポイントを見ていきましょう。
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