公差がなぜ今必要なのか? 本当は日本人が得意なことのはず:産機設計者が解説「公差計算・公差解析」(1)(1/4 ページ)
機械メーカーで機械設計者として長年従事し、現在は3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者が公差計算や公差解析、幾何公差について解説する連載。第1回はなぜ今、公差が必要なのかについて話をする。
2018年の「3D設計推進者の眼」の中で、「公差計算・公差解析」についてお話をしてきました。2019年は『産機設計者が解説「公差計算・公差解析」』として、さらに事例を交えて、さらに詳しく解説していきます。
現在では、この公差計算・公差解析を行う3D CADとの連携ツールがあります。私が知っている日本で購入可能なものとしては、
- SOLIDWORK TolAnalyst(米国:Dassault Systemes SOLIDWORKS)
- CETOL6σ(米国:Sigmetrix)
- Sigmund(米国:Varatech)
- TOLJ(日本:公差計算研究所)
といったような製品があります。
他、国内で公差設計・解析の教育などに取り組むプラーナーは、受講者向けにExcelを用いた公差計算ソフトを提供しています。
その他にも、ネット検索してみると、その検索ヒット数も多いのですが、私が知らない他の製品が検索結果として表示されます(2019年1月22日時点)。
その開発元を見ると米国が突出しています。私が知っている中では、日本製は上記の会社のみです。
現在販売されている3D CADシステムの開発元の多く(ほとんど)は、欧米企業です。また、設計者CAEであっても専任者CAEであっても、構造解析や熱解析といったCAEシステムはほとんどが欧米企業を開発元となっています。3D CADを中心としたソリューション展開の「うまさ」が欧米企業にあるのでしょうか。国産ソフトウェアとしては「FJKSWAD」(日本:エフジェイケースワッド)という設計者CAEがあり、筆者もそのユーザーです。
公差計算・公差解析は“擦り合わせ技術”(※1)ともいえます。
ふと、「公差計算・解析は、実は日本が得意とするところでは。もしかしたら、匠の技術があったから、それが技術として見えるところに出てこなかったのかも」と考えました。
擦り合わせ技術の例として、自動車はそれぞれ機能を持つアセンブリの組み合わせによって、1台の自動車が完成します。自動車の中の機能別のアセンブリは、さまざまな企業の製品によって製造され、この限られた空間の中に取り付けられます。
またアセンブリを構成する部品も、さまざまな部品メーカーによって、アセンブリの品質、車両の品質を管理する厳しい規格値の中で製造されています。さまざまな企業による製品・部品の技術によって1台の自動車が完成する技術もまた擦り合わせ技術と言えます。
日本の主力産業として、また強みとして、自動車産業が発展してきました。しかし、擦り合わせ技術の一端を担うはずの公差計算・公差解析ツールの“Made in JAPAN”が少ないことは不思議なのです。
この自動車産業の開発設計分野もまた、日本独自の設計ツールが運用され続けてきたのではなく、欧米製のハイエンド3D CADが主流となっていることも聞きます。これもまた、その理由の1つなのでしょうか。
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