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機械要素の基礎〜ねじの取り扱いに必要なJISの正しい理解〜3D CADとJIS製図(11)(1/2 ページ)

連載「3D CADとJIS製図の基礎」では、“3D CAD運用が当たり前になりつつある今、どのように設計力を高めていけばよいのか”をテーマに、JIS製図を意識した正しい設計/製図力に基づく3D CAD活用について解説する。第11回では、機械要素部品として頻繁に使用される「ねじ」の解説の続きをお届けする。

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 前回から機械要素部品として頻繁に使用される「ねじ」について解説を始めました。今回はその続きです。ねじは、機械要素において最も使用されるものなので、その取り扱いには“JISの正しい理解”が必要です。

⇒「連載バックナンバー」はこちら

組み立てられたねじ部品

 前回解説したように、「JIS B 0002-1」の「3.2 通常図示」では、部品としてのねじやねじ穴について規定されていますが、2019年の改訂によって「3.3 組み立てられたねじ部品」が追加されました(リスト1)(図1)。

JIS B 0002-1:2019改定より抜粋/編集
リスト1 JIS B 0002-1:2019改定より抜粋/編集
組み立てられたねじ部品
図1 組み立てられたねじ部品 出所:機械要素JIS要覧|新日本法規出版

 筆者が普段使用している「SOLIDWORKS」の「穴ウィザード」とデザインライブラリの「Toolbox」にある「ねじ六角穴付きボルト(JIS B 1176)」を使用して、ねじ穴を作成した例が図2となります。

「SOLIDWORKS」で描いた組み立てられたねじ部品(Toolboxを使用して編集)
図2 「SOLIDWORKS」で描いた組み立てられたねじ部品(Toolboxを使用して編集)[クリックで拡大]

 ご覧の通り、JIS(図1)と同じように作成できません。試しに、このボルトに対して[挿入(Insert)]−[アノテートアイテム(Annotations)]−[ねじ山(Cosmetic Thread)]の順でねじの定義を行っても、残念ながら2D図面に変化は生じませんでした。このように、使用するCAD環境の機能の範囲内で何とか表現するしかありません。

 なお、ToolboxにあるJIS規格の「ボルトとネジ」フォルダの中には、次のような「六角穴付きボルト」が用意されています。画面上でドラッグ&ドロップするだけで使用箇所に応じたサイズの部品を自動生成し、アセンブリに追加できるのでとても便利です。

ToolboxライブラリのJIS六角穴付きボルト
図3 ToolboxライブラリのJIS六角穴付きボルト[クリックで拡大]

 図3を見てお分かりの通り、それぞれJIS番号が記載されています。要するに、これらの六角穴付きボルトもJISによって規定されています。例えば、筆者が最も利用する六角穴付きボルト(部品等級A)については、「JIS B 1176」の中で、“ねじの呼び(M)”がM1.6〜M64までの並目ねじと、ねじの呼びがM8×1〜M36×3までの細目ねじの特性が規定されています。

 補足ですが、この部品等級にはA、B、Cの3種類があり、「JIS B 1021:締結用部品の公差ー第1部:ボルト、ねじ、植込みボルト及びナットー部品等級A、B及びC/Tolerance for fastenersーPart1Bolts,screws,studs and nutsーProduct grades A,B and C」の中で、ねじ部品として求められる“仕上がり精度”が等級ごとに定められています。

 表1はその等級を定めた記述の一部ですが、六角穴の2面幅、対角距離、深さ、ねじの頭部の高さなどの各項目を満足させる仕上がり精度が、それぞれの等級で定められています。設計者が普段あまり意識することのない部分かと思いますが、一度JISを確認しておくことを推奨します。

部品等級について
表1 部品等級について[クリックで拡大]

 これとは別に、ねじ部の等級精度があります。「JIS B 0209:2001 一般メートルねじー公差ー第1部:原則及び基礎データ/ISO general purpose metric screw threads―ToleranceーPart1:Principles and basic data」の中で、メートル並目ねじと、細目ねじの両方の公差が規定されています。

 ここでは、有効径、内径、外径の基準寸法を基準値として、めねじ側はG、Hの公差が、おねじ側はe、g、hの公差が決められています。また、ねじの強度を示す「強度区分」という分類もありますので、ぜひ押さえておいてください。

 その他にも「JIS B 1194 2006:六角穴付き皿ボルト」があります。さらに、企業ごとに標準的に使用される六角穴付きボルトもあると思いますが、SOLIDWORKSでは、こうした自社標準機械要素をToolboxライブラリとして登録することも可能です(図4)。

Toolboxライブラリへの自社標準機械要素のライブラリ化
図4 Toolboxライブラリへの自社標準機械要素のライブラリ化[クリックで拡大]

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