低速自動運転を含む新規事業で2024年に売り上げ300億円、ヤマハ発動機の新中計:製造マネジメントニュース(2/2 ページ)
ヤマハ発動機は2022年2月10日、2022〜2024年の中期経営計画を発表した。
ロボティクスやパワートレイン技術で設備投資
この中期経営計画の一環で、表面実装機や産業用ロボットの開発、製造、販売を手掛ける浜松ロボティクス事業所の生産能力を拡大する。2016年末に静岡県浜松市北区豊岡町に建設した建屋を2023年1月から増改築し、2024年6月に工事を完了させる。
これにより、事業所の建屋の延べ床面積は現在の1.6倍となる8万2000m2となる。生産面積は1.8倍に拡大し、表面実装機の生産能力は約2倍に増強される。さらに、開発エリアや評価・実験室などの環境整備、スマートショールームの設置も予定している。ロボティクス事業は新中計で年率16%での成長を目指す。トータルサプライヤーとしてのシナジー最大化がテーマとなる。
モーターや水素エンジンなどカーボンニュートラル実現に貢献するパワートレイン技術を強化するための研究・開発設備も増設する。2021年に完成した建屋にモーターベンチや水素供給装置、カーボンニュートラル燃料に対応したタンクなどを設置していく。ヤマハ発動機では、2050年までに製品使用時など(スコープ3)におけるCO2排出量を2010年比で90%削減する目標だ。新たな研究・開発設備でパワートレインのカーボンニュートラル化を推進する。
ヤマハ発動機は2024年までにEVバイクを10モデル以上投入する。プラットフォーム戦略で、主要コンポーネントを絞り込むことで効率的に幅広い出力領域に対応する。EVバイクに限定せず多様なパワートレインに対応した開発を推進する。
パワートレイン技術では、モーターと制御の手の内化を重視する。自動車用エンジンの供給のように、四輪車向けの駆動用モーターでも自動車メーカーに貢献できるよう技術を蓄積していく。自転車とスクーターの中間、二輪車と四輪車の中間となるような新しいモビリティにもモーターを提供したい考えだ。
二輪車事業では、拡大するASEANとインドの上位中間層を取り込むプレミアム戦略も推進する。デジタルとリアルを融合したマーケティングにより接点拡大や関係強化を図るため、コネクテッド対応車両を現状の5倍となる250万台に増やす。また、プレミアムスポーツ、プレミアムスクーターなど戦略セグメントを地域ごとに設定し、戦略セグメントをインドでは2倍、インドネシアでは1.3倍、フィリピンでは1.5倍に伸ばす。
マリン事業は、「マリン版CASE」の推進による提供価値拡大と高収益体質の強化を目指す。CASEのうち、コネクテッドではスマートフォンからの遠隔監視・操作が可能なシステムを提供する。販売面では大型船外機のラインアップを拡充、生産能力も増強する。米国の研究開発機能も強化する。
半導体不足に対応した設計変更を推進
新中計のスタートとなる2022年は好調な需要が継続し、全事業で前年越えの販売と増益を計画。売上高は前年比10.3%増の2兆円、営業利益は同4.2%増の1900億円、当期純利益は同16.4%減の1300億円を見込む。半導体などの部品供給不足、原材料や物流費の高騰は、限界利益率と経費率のコントロールやプレミアム戦略の推進によって吸収するという。
足元の2022年第1四半期(2022年1〜3月)で発生している半導体供給不足の影響は、年間を通じて挽回していく計画だ。部品の不足や供給問題が新たに発生する取引先が減ってきており、供給不足の全容をつかみつつあるという。4月以降も半導体の供給は厳しいが、めどがつかない部品については調達しやすい半導体への設計変更を進め、そのテストも前年から続けている。4月以降は調達可能な半導体を採用した設計に切り替わっていく。
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