コロナ禍で需要高まるマリンレジャー、ヤマハ発動機はマリン版「CASE」に注力:船も「CASE」
ヤマハ発動機は「ジャパンインターナショナルボートショー2021」(横浜ベイサイドマリーナでは2021年4月15〜18日開催、オンラインでは4月30日まで)において、マリン事業におけるCASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)の取り組みを発表した。
ヤマハ発動機は「ジャパンインターナショナルボートショー2021」(横浜ベイサイドマリーナでは2021年4月15〜18日開催、オンラインでは4月30日まで)において、マリン事業におけるCASE(コネクテッド、自動化、シェアリング、電動化)の取り組みを発表した。
CASEに注力するのは、マリンライフを安心で快適な経験にしていく重要性が高まっているためだ。コロナ禍において、ボートをはじめとするマリンレジャーの需要が拡大。米国舟艇工業会によれば、プレジャーボートの2020年の販売隻数は2019年から12%増のプラス成長だった。日本国内でもボート免許取得者数が前年比19%増の6万9000人台となり、15年ぶりの水準に達した。レンタルボート入会者数も免許取得者数の増加を受けて、過去最高を達成した。稼働率が向上するとともに、マリンレジャーのエントリー層からの関心が高まっている。
マリン版CASEは自動車のCASEとも共通している。コネクテッドは安心の提供に向けた機能だ。データコミュニケーションモジュール(DCM)をボートに搭載することで、品質問題の早期発見やトラブルの未然防止、顧客サービスの向上を図る。米国市場向けには、すでに「Helm Link」を提供している。
自動化に関しては、操船制御システム「HELM MASTER EX」を2020年に投入。同システムに対応した船外機のラインアップも充実させている。操船制御システムの拡張や機能追加により、安全性や快適性の向上に貢献する自動運転システムの構築を目指していく。電動化は静粛性の向上が図れるため、快適さの提供につなげる。モーターのみを動力とする推進機ユニットや、エンジンとモーターを組み合わせたハイブリッドシステムに取り組む。
2020年には、電動推進ユニットと直感的な操作を可能にするステアリングシステムを統合した次世代操船システム「HARMO」の実証運航も開始した。HARMOは、プロペラ翼のリム部に搭載したモーターによってプロペラを駆動する「リムドライブ方式」を採用。低速でも強い推進力を発揮できるため操作性が向上する。また、大舵角のステアリング機構により、その場でも回頭できるようにした。2機掛けの場合、ジョイスティックを横に倒すだけで横方向に移動でき、難易度の高い離着岸の操作がサポートされる。静粛性やジョイスティックによる操船しやすさが高い評価を得ており、今後本格的な市場導入を目指す。
シェアリングでは、マリンライフを体験する機会の提供につなげる。すでに会員制マリンクラブ「シースタイル」を展開しているが、ボートフィッシング向けの釣り場や釣り方、操船方法などをプロの船長に聞くプログラムを設ける。また、ウェイクサーフィンなどのアクティビティにも対応を拡大する。シースタイルの会員などエントリー層にも扱いやすい小型ボートを発売した。さらに、停泊中のボートで過ごすニーズが日本でも高まっていることを受け、フランスのボートビルダーであるベネトウグループとの連携を強化する。同グループのサロンクルーザーの輸入も開始する。
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