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船はどうやって自動運航するのか、クルマから使える技術も自動運転技術(1/4 ページ)

東京海洋大学が、2019年9月4日と5日に東京都内で水陸連携マルチモーダルMaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)の実証実験を実施。この記事では実証実験と討論会における自動運航に関する内容について主に解説する。

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今回の実証実験ではMaaSに組み込む水上交通機関として電気推進船「らいちょうI」による遠隔操船のデモを実施している(クリックして拡大)

 既報の通り、電通とMONET Technologies、東京海洋大学が、9月4日と5日に東京都内で水陸連携マルチモーダルMaaS(Mobility-as-a-Service、自動車などの移動手段をサービスとして利用すること)の実証実験を実施した。

→連載『船も「CASE」』バックナンバー

 その目的は、各企業や業界団体、そして、研究機関が研究開発を進めているMaaSシステムの中に、水上交通を組み込んだ場合の検証と、MaaSに組み込もうとしている「船版新交通システム」(東京海洋大学は「AWPM:Autonomous Waterborne People Mover」と呼んでいる)のデモンストレーションだ。2日間にわたって実施した実証実験の終了後には、東京海洋大学キャンパスで総括討論会も開催した。これらのMaaSを中心とした詳細についても既報にて解説しているのでそちらを参照してもらいたい。

 この討論会では、MaaSの他に自動運航に関して国土交通省の担当部署幹部と東京海洋大学の教授から説明されている(討論会で実施した3つの講演の内、2つが自動運航船に関するものだった)。また、実証実験でも自動運航船による遠隔操船のデモを実施している。この記事では、実証実験と討論会における自動運航に関する内容について主に解説する。

船首にアームを立てて無線LAN用ロッドアンテナを設置している。操船時には視界を遮るので本当なら操舵(そうだ)室天覆のマストに設けたいが、その付近は外部監視用のカメラと自動離着桟用の3D-LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)を設置しているため、やむを得ずこの場所になったという(左)。マスト灯の上に設置した4K全周カメラと左舷側に設けた3D-LiDAR(右)(クリックして拡大)
キャビン左舷側シートに設けたコンソール用PC。右のThinkPadは遠隔操船用パネルで陸上のコントロールセンターと同期して同じ画面を表示する。左のノートPCは無線LANの伝播(でんぱ)強度を測定して記録する(左)。操舵席コンソールは推進用バッテリーの電力管理用データ表示用。その上には前方監視用のネットワークカメラがある。この画像は陸のコントロールセンターにあるモニターに表示する。速力や現在位置など航法用データの表示は左舷側ダッシュボードにあるGPS内蔵魚群探知機を使っていた(右)(クリックして拡大)

 国土交通省で自動運航船に関する事業に携わる海事局海洋・環境政策課で技術企画室長と海洋開発企画調整室長を兼務する田村顕洋氏は、国土交通省が進めている「海事生産性革命とデジタライゼーション」と「自動運航船」事業について現状を解説した。

 先日掲載した記事「2025年に“日の丸”自動航行船が船出するために必要なこと」でも紹介したように、日本では現在2025年の実施を目指して自動運航船の開発を国土交通省主導で進めている。田村氏は、これら事業を進める理由として、海運船社だけでなく造船や港湾事業も含めた海事産業全体におけるコストと品質の競争力向上の他に、船員の人員不足と高齢化が進むにつれて増えている船舶事故の削減を掲げている。

 自動車の自動運転が、「システムに任せる操作と判断」の項目によって複数のレベルを設けているように、船舶の自動操船も、自動化や自律化の内容によって複数の段階を設けている。ただし、その段階基準は世界共通ではまだ定まっておらず、現時点では各国で独自に設定している。田村氏は、国土交通省が現在定めている自動運航の段階として、「フェーズI」「フェーズII」「フェーズIII」の3段階の基準を紹介した。「当初は船員などの判断支援が主たる機能。その後も機械が自律的に判断する領域が次第に増えていくが、人間の判断は引き続き重要」(田村氏)


国土交通省が定めた自動運航船のフェーズI、フェーズII、フェーズIIIの条件(クリックして拡大) 出典:国土交通省

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