構内物流をAGVではなく自動運転車に、ヤマハ発動機とティアフォーが成果を外販:自動運転技術
ヤマハ発動機とティアフォーの共同出資会社eve autonomy(イヴオートノミー)は2021年9月1日、工場や物流拠点などの構内向け自動運転車「eve auto」の先行受注を開始したと発表した。
ヤマハ発動機とティアフォーの共同出資会社eve autonomy(イヴオートノミー)は2021年9月1日、工場や物流拠点などの構内向け自動運転車「eve auto」の先行受注を開始したと発表した。
構内物流に自動運転技術を取り入れることで、工場内の効率的なオペレーションの推進や、ヒューマンエラーによる事故の抑制に貢献する。生産ラインの変化が大きい製造現場や、広い敷地内での搬送が必要なプラント、建物間の坂道も含めた搬送の自動化が必要な拠点など、さまざまな場所に向けて提案していく。
eve autoはヤマハ発動機の電動ランドカーに、自動運転に必要なセンサーやオープンソースのOS「Autoware」を搭載した車両だ。1500kgまでのけん引や300kgまでの積載に対応。段差や傾斜のある場所、雨天の屋外でも走行できる。乗用車の自動運転技術と同様に高精度地図を基に走行するため、工事不要で走行ルートの変更が容易である点がAGV(無人搬送車)に対する強みとなる。
eve autoはヤマハ発動機の浜北工場(静岡県浜松市)や磐田南工場(静岡県磐田市)で実際の業務に使用してきた実績があり、2022年夏からは外部に販売する。販売目標は2024年までの3年間で500〜1000台に設定した。eve auto本体だけでなく、工場などの構内での導入準備やアフターサービス、運行管理システムなどをオールインワンで提供し、構内物流の自動化を支援する。
ヤマハ発動機とティアフォー、eve autonomyの3社は「気軽に自動搬送を試し、誰でも使えるようにしたい」との思いで、月額利用料が30万円台前半からとなるサブスクリプション型の契約とした。売り切り型への対応も検討中だ。
複数の建屋を行き来する工程も見える化
eve autoはすでに量産されているランドカーをベース車両とし、新規に使用する部品を少なくすることで、自動運転車としてのコストを抑えた。LiDAR(Light Detection and Ranging、ライダー)はまだ高額だが、調達の工夫によって価格を抑えたとしている。また、構内物流に対応する上で、ランドカーの信頼性や堅牢性を生かす。eve autoの充電で稼働率が減少することを踏まえて、充電の待ち時間が不要な電池交換式への改造にも対応する。また、要望に応じてより高性能なバッテリーへの交換も対応を検討している。
自社工場でeve autoを導入した成果について、ヤマハ発動機は工程の見える化を挙げる。エンジンの基幹部品のように、複数の工程を経るために異なる建屋に運ばなければならない重量のある部品を対象とすることで、構内物流の自動化が図れただけでなく、フリートマネジメントによって部品がどの工程にあるかが把握しやすくなった。eve autoの経験を生かし、将来的には船など他のモビリティでも自動運転技術を導入する可能性を検討する。
歩行者や自転車、車両が自由に行き来する公道と比べて、関係者以外が立ち入らない構内は自動運転車を走らせやすいといわれる。しかし、狭い屋内で人やフォークリフトと安全に共存することや、自動車や自転車も異動し、段差などがある屋外での走行は技術的なチャレンジがあったとしている。
ヤマハ発動機の工場では2019年からeve autoを導入しているが、当初は運転席に人がいる状態で、レベル3の自動運転車として運用してきた。2020年以降は無人運転状態での運用に移行し、実績を積み重ねた。これらの取り組みをヤマハ発動機とティアフォーは共同開発で進めてきたが、2020年4月に共同出資会社eve autonomyを設立した。
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