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クルマのパーソナライズって言うんなら、ボディーカラーも変えなければ!自動車業界の1週間を振り返る(2/2 ページ)

さて、今週は現地時間の1月7日まで、米国ネバダ州ラスベガスにて消費者向けエレクトロニクス展示会「CES 2022」が開催されました。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の感染が再拡大し、さまざまな企業が現地での出展を見送り、オンラインでの出展に切り替えました。

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「無理だろうな」と思われる機能を実現する

 これまで、クルマを自分好みにするには、新車で購入するか、専門の業者に頼んで加工するしかありませんでした。クルマの内外装に飽きたからといって、気軽に、かつ頻繁に変更することは現実的ではありません。リセールバリューを気にする日本人にとっては、復元できない形で手を加えるなんて、もっての外でしょう。

 ソフトウェアでできることが増えるにつれて、「パーソナライゼーション」を新たな価値として打ち出す自動車メーカーが増えていきましたが、その対象はインフォテインメントシステムが中心です(人に合わせるという意味では、若いドライバーにクルマを貸すときに走行性能を制限するという提案もありますが、それほど出番が多いとは思えません)。

 それに対し、クルマの外観を自由に変えることは、当然ながらソフトウェアだけでは困難です。クルマの外観がボディーカラーだけでも気分に合わせて変えられるとしたら、多くの人が一度は試したくなるはずですが、インフォテインメントシステムを自分好みにするのに比べてハードルがとても高く、実現しなくても当然だと心のどこかで思っています。

 だからこそ、「ボディーカラーを変えるのもパーソナライゼーションだ」というBMWの提案には、意表を突かれました。CGや動かないモックアップでそういう機能を見せるのではなく、動くクルマでコンセプトを提案したのは愉快なことです。


iX M60の表面はこのようになっています[クリックで拡大] 出所:BMW

 ラスベガスに登場したiX M60は、E Inkの技術によってボディーカラーを変えています。電子書籍リーダーなどでおなじみの電子ペーパーです。だから白黒で、じわっと色が変わるのだと腑に落ちました。

 電子ペーパーでクルマ全体を包むのは決して簡単ではなく、現地で車両を見た人のSNSの投稿によると、低温でうまく動作しない場合に備えてBMWは複数のiX M60を用意していたそうです(1月のラスベガスは結構寒いです)。また、電子書籍リーダーのように平らではないため、iX M60の表面にはしわが寄っている部分があった、という投稿も見かけました。

家の中のように、ぜいたくなこだわった空間へ

 BMWは、外観のパーソナライゼーションが白黒2色のボディーカラーで十分とは考えていないでしょう。量産車に取り入れるなら、低温でうまく色が変わらないなんて売り物としては論外でしょうし、洗車や、クルマをこすったりぶつけたりしたときの対策も必要です。生産ラインでの製造方法も課題になります。まだまだ発展途上のコンセプトであることは明白ですが、今後どのように現実的な装備に落とし込むのか楽しみですね。

 過去、自動車業界には着せ替え可能なクルマの提案が幾つかありました。メルセデス・ベンツが1995年に発表した「Vario Research Car」はセダン、ワゴン、オープンカー、トラックの4種類に上屋を載せ替えることができました。日産自動車の「エクサ」も交換可能な2種類のリアハッチが用意されていました。最近では、ダイハツ工業の「コペン」が着せ替えに対応しています。

 パネルやボディーの大部分を載せ替えるようなパーソナライゼーションは、ビジネス的には決して簡単ではないかもしれません。しかし、このままクルマに対するパーソナライズ熱が高まっていけば、またどこかで着せ替えが求められるタイミングも来るでしょう。着せ替えという自由な発想は、大事に持ち続けてほしいところです。

 さて、BMWがiX M60に盛り込んだデジタル体験はこれだけではありません。「クルマは人の感情を動かす」という信条の下で、インテリアのデジタルアートや、映画などを楽しむシアターモードとサウンドシステムを採用しています。速く高性能なクルマがもたらす体験もあるけれど、リラックスして過ごす時間も必要だ、という考えのようです。

 競合になるかどうかは別にして、ソニーが提案するEVも同じ方向を向いています。車内を家に近づけていくというアイデアは以前からあるものですが、今後さらに大きな流れになっていくのかもしれません。

→過去の「自動車業界の1週間を振り返る」はこちら

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