AIエッジコンピューティングの社会実装拡大へ、OKIがコンテストを実施:エッジコンピューティング(2/2 ページ)
OKIは2021年12月15日、AI(人工知能)エッジコンピュータの社会実装を広げることを目指したイベント「AIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテスト2021」を開催。AIエッジコンピュータの世界の広がりを訴えるカンファレンスを開催するとともに、同社のAIエッジコンピュータ「AE2100」を活用した新たなソリューションの成果を評価するコンテストを実施した。
社会課題を解決するさまざまなソリューションが登場
今回の「AIエッジソリューションコンテスト2021」では、10社がプレゼンテーションとデモを行い、特別審査委員や来場者の投票により、1位にウサギィの「視線シミュレーションAI」、2位に東海エレクトロニクスの「“におい”の見える化による予防保全・見守り」、3位にメトロの「複数アナログメーター一括データ化によるAI異常予測」が選ばれた。また、Ledge.ai賞として、ソルティスターによる「エッジコンピューティング向けアプリケーションプラットホーム&組込み用ハイブリッドデータベース」が受賞している。
ウサギィの「視線シミュレーションAI」は、視線データを取得するアイトラッキングデバイスを活用し、さまざまな人にさまざまな映像を見てもらった視線データを学習したAIモデルを構築し、シミュレーションにより人が視線を向けそうな箇所をヒートマップで表示できるシステムだ。
交通標識や広告、店舗のディスプレイなど、人の視線の評価が必要な領域は数多くあるが、アイトラッキングデバイスなどを使った評価の負荷が高く、利用は一部に限定されている。しかし、「視線シミュレーションAI」は人が視線を向けそうな箇所をシミュレーションできるデータが学習済みモデルとして提供されているために、映像を読み込ませるだけですぐに視線についての評価を行うことができる。従来はクラウド型のサブスクリプションサービスとして展開していたが「AE2100」と組み合わせることでエッジでのスタンドアロン型のシステムとして構築可能。「店舗などで常に現場で扱いたい場合などでも展開しやすくなる」(ウサギィ)としている。
東海エレクトロニクスの「“におい”の見える化による予防保全・見守り」は、介護業界を対象としたにおいの見える化システムである。シンプルなにおいセンサーをおむつ近くに設置し、においの発生タイミングや期間などをAIで学習することで、においの元となる現象が尿か大便かを判別し、それに適応した介護につなげる。介護業界は厳しい労働環境が指摘されているが「これらの見える化システムにより介護者にとっての負担も軽減できる」(東海エレクトロニクス)としている。
メトロの「複数アナログメーター一括データ化によるAI異常予測」は、工場などの設備でよく使用されているアナログメーターをAIにより映像から一括でデジタルデータ化し、さらにそのデータを学習することで異常予測を行うというものだ。カメラ1台とAE2100を組み合わせることで複数メーターの測定値をリアルタイムで解析し結果を通知することができる。人による定期点検から常時監視を行えるようになる。アナログメーターのデジタルデータ化については学習済みモデルとして提供する他、異常予測については通常運転時の計器情報を記憶しそこから大きく外れた「いつもと違う」を把握するため、ユーザー側で学習を行うような負荷が発生しないことが特徴だ。
ソルティスターの「エッジコンピューティング向けアプリケーションプラットホーム&組込み用ハイブリッドデータベース」は、エッジ環境でさまざまな形で送られてくるデータを「コレクター機能」で整理し、AIでの学習などデータ活用のプラットフォームに最適な形で流すことができるエッジデータの交通整理の機能を担うソフトウェアである。工場などでは、エッジ側でのデータはPLCや各種センサー、工作機械、カメラ動画、RFIDなど、機器や各種企画特有のさまざまな形で送られてきており、これらをすぐに組み合わせて使うことはできない。これらの多様なデータをタイムラインで整理し、さらにデータを活用するプラットフォームに最適な形で送り込むことができる。一方で、これらの分析結果を最適な形で、エッジ側の各種機器に送り込み制御の変更などを行うことなども可能となる。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- “堅い”業界で培ったエッジの信頼性をコトづくりに、OKIが取り組むDXへの挑戦
ATM(現金自動預け払い機 )や通信システムなど社会インフラを担うさまざまなモノづくりを担ってきた信頼性や、AIエッジ技術をベースとし、さまざまな領域でのパートナーシップを通じて共創を広げているのがOKIである。OKIでDX/イノベーション統括担当の執行役員を務める田中信一氏に話を聞いた。 - AIエッジコンピューティングで害獣対策や渋滞対策、OKIがコンテスト開催
OKIは2020年9月29日、AIエッジの社会実装拡大に向けて「AIエッジ・カンファレンス&ソリューションコンテスト」を開催。共創パートナー19社によるソリューションの開発成果と、その内容の表彰を行った。 - 「ないから作った」、OKIが発売する20万円以下のAIエッジコンピュータ
OKIはAIエッジコンピューティング事業戦略と、その戦略製品となるAIエッジコンピュータ「AE2100」を発表した。長年の社会インフラ領域での端末開発の実績を生かし、高信頼性を持ちながら高いコストパフォーマンスを維持する端末を提供し、第4次産業革命を推進していく方針だ。 - いまさら聞けない「エッジコンピューティング」
IoT活用やCPS進展の中で、あらためて脚光を浴びている「エッジコンピューティング」。このエッジコンピューティングはどういうことで、製造業にとってどういう意味があるのかを5分で分かるように簡単に分かりやすく説明します。 - OKIの本庄工場がAIエッジ×ローカル5Gでスマート化、工場版ZEBも実現へ
OKIは、「ワイヤレスジャパン2021」において、本庄工場(埼玉県本庄市)に導入しているAIエッジとローカル5Gを組み合わせた「外観異常判定システム」を披露。同工場は、敷地内にあるITSテストコースでもローカル5Gを用いた実証試験が可能になっている他、消費する一次エネルギーの収支をゼロにする新工場を2022年4月に稼働させる予定だ。 - 表情と視線からAIがおすすめメニューを提案、OKIがサブウェイで実証実験開始
OKIは2021年8月2日〜6日にかけて、AIが表情や視線から顧客の興味関心を推定して、おすすめ商品をレコメンドする「提案型注文システム」の実証実験をサブウェイ渋谷桜丘店(東京都渋谷区)で実施する。