“堅い”業界で培ったエッジの信頼性をコトづくりに、OKIが取り組むDXへの挑戦:製造業×IoT キーマンインタビュー(1/3 ページ)
ATM(現金自動預け払い機 )や通信システムなど社会インフラを担うさまざまなモノづくりを担ってきた信頼性や、AIエッジ技術をベースとし、さまざまな領域でのパートナーシップを通じて共創を広げているのがOKIである。OKIでDX/イノベーション統括担当の執行役員を務める田中信一氏に話を聞いた。
デジタル技術を基盤として新たな価値創出を進めるDX(デジタルトランスフォーメーション)への取り組みが加速している。製造業にとっては「モノ」の強みをベースとしつつ、モノづくりだけではなくデジタル技術やデータ活用を組み合わせた付加価値創出が求められるが、新たな発想やパートナーシップなどが必要となり、うまく進められていない企業が多いのも現実だ。
こうした中、ATM(現金自動預け払い機 )や通信システムなど社会インフラを担うさまざまなモノづくりを担ってきた信頼性や、AIエッジ技術をベースとし、さまざまな領域でのパートナーシップを通じDX関連ビジネスを共創を通じて、広げているのがOKIである。OKIでDX/イノベーション統括担当の執行役員を務め、ソリューションシステム事業本部 副本部長 兼 金融・法人ソリューション事業部長の田中信一氏に話を聞いた。
本連載の趣旨
ITmedia産業5メディア総力特集「IoTがもたらす製造業の革新」のメイン企画として本連載「製造業×IoT キーマンインタビュー」を実施しています。キーマンたちがどのようにIoTを捉え、どのような取り組みを進めているかを示すことで、共通項や違いを示し、製造業への指針をあぶり出します。
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AIエッジの技術と顧客基盤や導入実績などの強みを生かす
MONOist OKIがDXを支援する強みというのはどのようなところにあると考えますか。
田中氏 DXにおけるOKIの強みには、まずはエッジの技術力がある。金融や通信などミッションクリティカルな領域での高信頼端末のモノづくりで培ったAIエッジを中心としたモノづくりの技術力はDX推進においても大きな核となる。加えて、これらで培った顧客基盤がある。社会インフラサービス提供者を中心とした顧客基盤は特徴的なもので、ここでも他社にない強みが発揮できる。さらに、実際にこれらの顧客に導入しているエッジ領域製品群や関連ソリューションがビジネスベースで活用されているインストールベースでの実績がある。これらを組み合わせ、バーチャルの世界におけるクラウドプラットフォームと結んでいくことで新たな価値を生み出していく。
組織としても「DX事業推進センター」を設置し、OKIが持つさまざまな事業の強みを組み合わせて企業のDXを支援できるように進めている。また、DXといえば新たな事業創出に目が行きがちだが、それらを支える社内の体制作りも強化している。さまざまな規格に裏付けされたマネジメントシステムの構築に加え、DX認定制度なども活用しながら、社内エンジニアの教育などを進めている。AIエッジの社会実装の加速と共創によるビジネス創出を生かし、DX領域での売上高を2019年度に対し、2022年度は2倍以上とすることを目標に取り組んでいる。
パートナーシップで協調領域を強化
MONOist 価値を創出するためには、協調領域と競争領域を見定めて、自社の強みを生かす部分とパートナーシップを生かす部分が出てくると思います。その点についてはどう考えていますか。
田中氏 デジタル技術の発展により、ハードウェアの端末だけで企業の抱える課題を解決することは難しい状況が生まれている。そのためには、その事業が持つ業界特有の事象に対する知見がまず必要で、抱える課題に対して、解決の道筋を示すことが求められる。これを、ハードウェアをソリューションの一部とし、さまざまなITやデジタル技術を組み合わせて解決する具体的な形を作り出すということがポイントだ。そこでは、自社で難しい部分は他社とのパートナーシップの形でソリューションを提供するということは必須だと考えている。
OKIが得意なところは先述したように、AIエッジ技術を生かした、エッジのハードウェア技術とこれらから最適なセンシングデータを取得し収集する技術だと考えている。これらの領域は、独自の強みとして自社で取り組む。一方で、集めたデータ活用システムやソリューションを形にするには、さまざまなシステムの組み合わせなど、OKIだけでは難しいことも多く、システムインテグレーター(SI)やクラウドプラットフォーマーなどと組んで進めていく。
具体的には、AIエッジ領域でのエコシステム構築を目指す「AIエッジパートナー」や、OKIと共同でイノベーション創出を目指す「オープンイノベーションパートナー」などさまざまなパートナー制度を用意している。AIエッジパートナーには2021年8月時点で94社が参加しており、さらに増やしてく考えだ。さらに、「共創パートナー」として一緒に新規ソリューションを作り出していくパートナー制度なども用意している。
また、業界としては、金融や通信などインフラやモノづくりの業種への知見を保有しているため、これらの業界知見を発揮できる領域でのDXを支援するという考えだ。具体的には「交通」「建設/インフラ」「防災」「金融/流通」「製造」「海洋」などの領域をターゲットとしている。従来の一方通行の顧客と納入元という関係ではなく、協力してソリューション構築を目指すパートナーとしての関係性を作りたいと考えている。
これらのAIエッジパートナーの持つ強みと共創パートナーが持つ課題をマッチングする「AIソリューションビジネスマッチング」なども実施した。またAIエッジの新たなソリューションのコンテストを行う「AIエッジソリューションコンテスト」も開催。パートナーエコシステムの活性化に取り組んでいく。
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