2D図面の“一義性”を考える【その5】大きさを定義する寸法(サイズ)の記入:3D CADとJIS製図(7)(4/4 ページ)
連載「3D CADとJIS製図の基礎」では、“3D CAD運用が当たり前になりつつある今、どのように設計力を高めていけばよいのか”をテーマに、JIS製図を意識した正しい設計/製図力に基づく3D CAD活用について解説する。第7回は、前回の続きとして、断面図を描く上での注意事項を紹介するとともに、寸法(サイズ)記入の方法を詳しく取り上げる。
2.2.寸法線の記入
寸法線は、指示する長さまたは角度を測定する方向に平行に引きます。寸法線の両端には端末記号を付けます。なお、1枚の図面の中では、寸法補助線の間隔が狭くて矢印を記入するスペースがない場合を除き、端末記号を混用してはいけません(図9)。
角度寸法を記入する寸法線は、角度を構成する図形の2辺または延長線(寸法補助線)の交点を中心として描いた円弧を寸法線にします。また、形体の二平面や円すい形体は、その母線(二平面や円すい表面の延長線として描かれた角度をもった線)の間に描かれた円弧を寸法線とします(図10)。
寸法線が隣接して連続する場合、寸法線は一直線上にそろえて記入するのがよいとされています。また、機能上関連する部分の寸法は、一直線上に記入します(図11)。
段差がある形体間の寸法記入は、次のいずれかによります(図12)。
- 形体間に対して直列寸法を指示
- 累進寸法によって、一方の形体側に起点記号を、他方の形体側に矢印を指示
狭い部分で寸法を記入しにくい場合は、部分拡大図を描いて寸法記入するか、次のいずれかにより寸法線を描きます(図13)。
- 寸法線から斜め方向に引き出した引出線に結び付けた参照線に寸法数値を記入。なお、この場合には、引出線を引き出す側の端には何の記号も付けません
- 寸法線を延長してその上に寸法値を記入
- 寸法補助線の間隔が狭く矢印を記入する場所がない場合は、矢印の代わりに黒丸または斜線を使用
対称の図形で対称中心線の片側だけを図に描いた場合は、寸法線はその中心線を越えて適切な長さに延長します。この場合、延長した寸法線の端には、端末記号を付けません。ただし、誤解する恐れがないのであれば、寸法線は中心線を越えなくてもよいです(図14)。
繰り返しになりますが、3D CADが提供する図面機能の全てがJISに準拠しているわけではありませんので、手描き図面や2D CADと同じように、規定通りに図面を描けないこともあります。そのため、社内共通ルールを整備して、限られた機能の中でうまく運用していく必要があります。
次回は「寸法補助記号」や「穴の寸法記入方法」について解説します。お楽しみに! (次回へ続く)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
関連記事
- ママさん設計者がやさしく教える「部品図の描き方超入門」
ファブレスメーカーのママさん設計者が製図初心者向けに、「部品図」の描き方を分かりやすく解説。机上の学習も大切だが、実際に自分の手で図面を描いてみることが何よりも大切だ! - 投影図のウソ・ホントをかぎ分けよう
職場で慣れ親しんだ製図作法さえ、実は間違っていることがある。今回は、投影図に関する間違い探しの出題だ。 - 加工者の技能と心遣いを引き出すための製図
設計意図と併せ加工現場の事情もできるだけよく考えながら幾何公差を指定する。それが部品や製品の品質を高める。 - 脱2次元できない、3次元化が進まない現場から聞こえる3つの「ない」
“脱2次元”できない現場を対象に、どのようなシーンで3D CADが活用できるのか、3次元設計環境をうまく活用することでどのような現場革新が図れるのか、そのメリットや効果を解説し、3次元の設計環境とうまく付き合っていくためのヒントを提示します。 - 公差がなぜ今必要なのか? 本当は日本人が得意なことのはず
機械メーカーで機械設計者として長年従事し、現在は3D CAD運用や公差設計/解析を推進する筆者が公差計算や公差解析、幾何公差について解説する連載。第1回はなぜ今、公差が必要なのかについて話をする。 - 機械設計って、どんなことをするの?
設計の概念を勘違いしているならば、CADを使う意味もなく、残業続きの日々となる。20年のキャリアを持つ技術士が、あなたをデキるエンジニアにすべく、設計の考え方を根底からたたき直す。(編集部)