2021年度上期の自動車生産は2019年の同時期から2割マイナス、回復まで道半ば:自動車メーカー生産動向(4/4 ページ)
半導体不足や東南アジアのロックダウンなどの影響が自動車生産へ大きなダメージを与えている。日系乗用車メーカー8社合計の2021年9月のグローバル生産台数を見ると、三菱自動車以外の7社が前年実績の4分の3以下に落ち込んだ。国内生産に至っては4分の1以下まで減産するメーカーもあるなど、事態が深刻化している。
スバル
スバルも半導体不足による減産が響いた。2021年4〜9月のグローバル生産台数は、前年同期比3.4%減の34万1791台と2年連続で前年実績を下回った。前年のコロナ禍で大きく落ち込んだ水準をさらに割り込んだ格好だ。このうち国内生産は同1.4%減の21万7758台と2年連続のマイナス。海外生産も同6.8%減の12万4033台と4年連続の前年割れとなった。スバルは、米国の経済回復に伴い受注が好調で、需要に対して車両供給が追い付かない事態が続いており、在庫不足が深刻化している。
半導体不足の解消の見通しが立たない中、さらに9月からは東南アジアからの部品供給難による生産調整も余儀なくされている。9月単月の国内生産は前年同月比74.8%減の1万5509台と急減し、3カ月連続のマイナス。9月の国内生産では8社で最大の落ち込みとなった。唯一の海外生産拠点である米国生産も同56.4%減の1万5155台と半減し、4カ月連続で減少した。海外生産も8社で最も大きな減少幅となった。その結果、9月のグローバル生産台数は同68.1%減の3万664台と3カ月連続の前年割れで、8社で最も厳しい状況となった。
マツダ
マツダはサプライチェーンの混乱に加えて自然災害にも苦しめられた。2021年4〜9月のグローバル生産台数は、前年同期比2.4%減の46万5699台と4年連続で減少した。台数実績でも三菱自動車を下回り、8社の中での順位は7番目となった。
4〜9月の国内生産は、前年同期比14.3%増の31万1739台と2年ぶりにプラスへ転じたものの、2019年との比較では3割以上落ち込むなど振るわない。要因としては、7月に半導体不足で防府工場で稼働停止を実施したのをはじめ、大雨で本社工場と防府工場で7、8月と稼働停止を余儀なくされた。さらに8月には中国・上海の空港でCOVID-19感染が確認されたことで貨物便による部品供給が滞り、稼働停止を避けられなかった。その結果、8月の国内生産は統計の開示以降で最少だった。
4〜9月の海外生産は、前年同期比24.7%減の15万3960台と4年連続で前年実績を下回った。8社では最大の減少幅で、2桁パーセント減もマツダのみだった。国別では、中国はいち早く市場回復が進んだ前年の反動減と、「マツダ6」や「CX-4」の需要減退が重なり、同42.0%減の7万4704台と、中国生産する5社で最大の落ち込みとなった。タイも半導体不足で稼働を停止したため同21.1%減と低迷。2021年3月末でピックアップトラック「BT-50」の生産を終了した影響も出ている。一方メキシコは、前年に4、5月と生産調整を実施したため、同16.0%増とプラスを確保した。
9月も部品の供給不足による減産が続いている。グローバル生産台数は、前年同月比44.1%減の7万843台と3カ月連続のマイナスとなった。国内生産が同49.3%減の4万2305台と半減し、3カ月連続で前年実績を下回った。9月としても統計の開示以降最も少ない台数となった。海外生産も、同34.0%減の2万8538台と5カ月連続のマイナス。タイは半導体不足やCOVID-19の感染拡大により稼働を停止したため、同64.8%減と大幅減となった。メキシコも半導体不足による操業停止で同36.5%減。中国はCX-4の販売減少に加えて、電力不足による稼働停止も行ったため同24.7%減と伸び悩んだ。
三菱自
8社の中で唯一大幅プラスとなったのが三菱自動車だ。2021年4〜9月のグローバル生産台数は、前年同期比68.6%増の46万6511台と3年ぶりにプラスへ転じた。ただ、2019年実績と比べると3割減という実績で、半導体不足による稼働調整などが影響している。海外生産は前年同期比78.0%増の27万980台と2年ぶりに前年実績を上回った。前年がコロナ禍で低迷していた東南アジアでの回復が貢献しており、タイが同91.5%増、インドネシアに至っては5倍強と主要市場がそろって大幅に増加した。一方、いち早く市場回復が進んだ中国は同38.2%減と低迷した。
国内生産は前年同期比57.2%増の19万5531台と3年ぶりに増加した。国内販売では「eKワゴン」や「デリカD:5」がけん引したほか、新型「アウトランダー」が好調な北米向け輸出も同6.5倍と貢献した。
9月単月のグローバル生産も好調で、前年同月比26.1%増の9万5739台と6カ月連続のプラス。このうち海外生産は同32.4%増の4万9127台と7カ月連続で増加した。主力拠点のタイが同44.9%増と好調に推移したほか、前年がロックダウンで生産停止していたインドネシアが同2倍超と貢献した。一方、中国は同44.6%減の3894台と大きな落ち込みを見せた。国内生産も回復傾向が続いており、同20.0%増の4万6612台と6カ月連続で増加。デリカD:5やeKシリーズなど国内販売が増加したほか、輸出も北米向けが同3.5倍と貢献した。
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