2021年度上期の自動車生産は2019年の同時期から2割マイナス、回復まで道半ば:自動車メーカー生産動向(3/4 ページ)
半導体不足や東南アジアのロックダウンなどの影響が自動車生産へ大きなダメージを与えている。日系乗用車メーカー8社合計の2021年9月のグローバル生産台数を見ると、三菱自動車以外の7社が前年実績の4分の3以下に落ち込んだ。国内生産に至っては4分の1以下まで減産するメーカーもあるなど、事態が深刻化している。
スズキ
スズキの2021年4〜9月のグローバル生産台数は、前年同期比32.3%増の127万4800台と3年ぶりにプラスへ転じた。このうち同社生産の半数以上を占めるインドは、前年がCOVID-19感染拡大によるロックダウンなどを実施していた反動増により、同62.5%増の73万2211台と大幅に伸長し、3年ぶりのプラス。その結果、海外生産も同60.4%増の89万597台と3年ぶりに増加した。ただ、経済減退などで市場が冷え込んでいた2019年との比較でも1割強のマイナスであり、サプライチェーンの混乱など本格回復とは程遠い状況だ。
東南アジアからの部品供給難の影響をより大きく受けているのが国内生産だ。4〜9月は、前年同期比5.9%減の38万4203台と3年連続で減少した。前年がCOVID-19感染拡大による生産調整や完成検査問題対策で工場のラインスピードを落としていたことを考慮すると、スズキの生産能力に対してかなり少ない台数と言わざるを得ない。実際に半導体不足を理由に4月から生産調整を続けているほか、足元ではサプライチェーン混乱の影響による減産も余儀なくされている。
9月単月のグローバル生産台数は、前年同月比42.5%減の16万8772台と2カ月連続で減少した。国内生産は同35.6%減の6万595台と4カ月連続のマイナス。国内市場向け新型車「ワゴンRスマイル」の好調といった好材料もあるが、東南アジアからの部品供給難が水を差しており、9月は相良工場、磐田工場、湖西工場、浜松工場を対象に最大5日間生産を停止したことが大きく響いた。
国内以上に影響が大きいのが海外生産で、9月は前年同月比45.8%減の10万8177台と8カ月ぶりにマイナスへ転じた。これは半導体不足や部品供給難を理由にインドで大規模な生産調整を実施したのが要因。9月のインド生産は同51.1%減と半減し、2カ月連続で減少した。インド以外の海外生産も前年から2割程度減らした。
ダイハツ
ダイハツの2021年4〜9月のグローバル生産は、前年同期比18.6%増の66万6499台と2年ぶりに前年実績を上回った。けん引役は海外生産で、同69.9%増の27万7431台と2年ぶりにプラスへ転じた。特にインドネシアが前年のロックダウンに対する反動増で前年比3倍超と大幅な伸びを見せた。一方、マレーシアは変異株の感染拡大によるロックダウンで、6月1日から8月中旬まで工場の稼働停止を余儀なくされた結果、前年に比べて4割近く台数を落とした。
4〜9月の国内生産は前年同期比2.4%減の38万9068台と2年連続で減少した。軽自動車は同4.9%増とプラスを確保したものの、登録車は同14.6%減と振るわなかった。半導体不足で6、7月と稼働停止日を設けた。さらに足元では、ベトナムとマレーシアからの部品供給が滞ったことで8月下旬から大規模な生産停止に追い込まれている。本社工場、滋賀工場、京都工場、ダイハツ九州で稼働を停止し、「ハイゼット」シリーズを除く全車種に影響が及んだ。中でも「トール」とトヨタ向けにOEM供給する販売好調な「ルーミー」などを生産する本社工場は9月の全稼働日で生産を停止。このため9月単月では、登録車生産が前年同月比93.5%減の2158台にとどまった結果、国内生産は同68.2%減の2万9173台と大幅マイナスとなった。
海外生産も依然として二極化している。9月単月では、インドネシアが前年の反動増が続いており、前年同月比56.1%増。一方のマレーシアは8月中旬から徐々に稼働を再開しているものの、同48.9%減と厳しい状況は変わらない。その結果、海外生産トータルでは、同7.2%増の5万9551台と2カ月連続のプラスとなった。
ホンダ
半導体不足の影響が顕著に表れたのが、ホンダとSUBARU(スバル)だ。ホンダの2021年4〜9月のグローバル生産は、前年同期比6.2%減の197万8792台と2年連続で前年実績を下回った。グローバル生産の減少幅は8社の中で最大となった。
中でも厳しいのが国内生産だ。ホンダは4〜9月で前年同期比18.4%減の27万1050台と2年連続のマイナス。減少幅はCOVID-19感染拡大により生産調整を余儀なくされた前年と比べては6.7ポイント改善したものの、8社では唯一の2桁パーセント減となった。
半導体不足による減産が深刻で、9月単月でも前年同月比55.5%減の2万9743台と2カ月連続で減少した。人気の新型車「ヴェゼル」はグレードによっては納期が1年以上まで伸びており、一部グレードでは受注を停止する事態にまで発展している。国内最量販車種の「N-BOX」も半導体不足の影響を受けており、車名別ランキングではトヨタ「ヤリス」に抜かれ、4〜9月としては4年ぶりに首位から陥落した。足元では影響が一層深刻で、9月のN-BOXの販売台数は前年同月比36.6%減と急ブレーキがかかっている。半導体不足の影響について副社長の倉石誠司氏は「2022年1〜3月から回復に向かうと見ており、年明けから挽回生産を進める」と説明する。
4〜9月のホンダの海外生産は、前年同期比3.9%減の170万7742台と3年連続のマイナスとなった。要因は最大市場の中国で、前年にいち早く回復した反動減や半導体など部品供給の支障により5月以降は2桁パーセントの前年割れが続いた。その結果、同21.4%減の75万2633台と10年ぶりの前年割れとなった。中国の低迷により、アジアトータルでも同11.6%減と3年連続のマイナス。一方、中国と並ぶ主力市場の北米は、前年のCOVID-19感染拡大で生産停止した反動により同4.6%増の65万2641台と2年ぶりに増加した。ただ、コロナ禍前の2019年の実績との比較では3割減らしており、半導体不足が影を落としている。
海外生産も足元の厳しい状況は変わらない。9月単月では前年同月比25.8%減の30万1197台と4カ月連続のマイナス。特に北米が同43.1%減の8万6193台と低迷し、4カ月連続で減少した。中国は同10.4%減の16万9306台で5カ月連続の前年割れ。減少幅は7月をピークに徐々に回復している。アジアトータルでも同11.9%減と4カ月連続のマイナスだった。国内外の厳しい状況により、9月のグローバル生産台数は同30.0%減の33万940台と4カ月連続で前年実績を下回った。
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