触覚伝達デバイスの浸透へ2つの技術を融合、京セラの「HAPTIVITY i」:組み込み開発ニュース(2/2 ページ)
京セラが薄型かつコンパクトでシームレスな筐体に触覚伝達機能を組み込める新技術「HAPTIVITY i」を開発。主に指先に対してリアルで多彩な触感を再現する京セラの触覚伝達技術「HAPTIVITY」と、電子部品を搭載した基板を3D射出成形でカプセル化するフィンランドのタクトテックの「IMSE」を融合させた複合技術となる。
機械式スイッチと比べて厚み24%、部品点数90%、重量36%を削減
今回発表したHAPTIVITY iは、HAPTIVITYとIMSEの互いの特徴を融合するとともに課題を解決すべく融合した技術になる。HAPTIVITYは触覚伝達機能を搭載する筐体の振動させやすさに課題があり、IMSEは軽量で薄型の筐体に触覚伝達機能を搭載したいという要望があった。IMSEに触覚伝達機能のHAPTIVITYを内蔵すれば、軽量で薄型、高剛性の筐体構造によって振動を伝えやすくなり、触覚伝達の機能性も向上できる。
HAPTIVITY iの特徴は2つある。1つは「薄型化とシームレス3Dデザインによる新しいHMIデバイスの実現」である。操作感を損なうことなく従来の機械式ボタンを代替でき、さらなる筐体の薄型化や、機械式ボタンの押し込み構造に必須となる継ぎ目を持たないシームレスな3Dデザインを実現できる。これによって、自由な設計が可能になり、顧客のニーズに合わせた従来とは異なる新しいHMIデバイスを実現し、幅広いアプリケーションを提案できるようになる。
もう1つは、サイズや部品点数、工数の削減である。機械式ボタンを用いるHMIデバイスは、複数のサプライヤーから部材を購入して組み立てた上で性能を調整する必要がある。一方、HAPTIVITY iは加飾、照明、静電容量センサーによるタッチスイッチ、HAPTIVITYなどを1つのモジュールとして提供することができる。例えば、自動車のステアリングスイッチを従来の方式からHAPTIVITY iに変更することで、厚みで約24%、部品点数で約90%、重量で約36%の削減が可能になったという。
また、触覚伝達機能を持つデバイスの組み込みは顧客側で実装、調整する必要があったが、HAPTIVITY iであれば外観デザインが施された部品を内蔵する機能部品として提供されるので、そういった作業も不要になる。さらに、一般的な触覚伝達デバイスがタッチパネルを振動させていたのに対し、IMSEによって3D化されたタッチセンサーを振動させられる点も大きなメリットになる。
触覚伝達デバイス市場の規模は2020年が3700億円で、2030年には6000億円まで拡大すると予測されている。この6000億円のうち、IMSEを用いた触覚伝達機能を組み込んだHMIデバイスが300億円を占めるとして、京セラはHAPTIVITY iによってその100%の獲得を目指す。まずは産業機器向けへの展開を進め、車載システムや医療、通信などの分野に広げていきたい考えだ。
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