食品を自在につかむロボットをどう実現するか、CPSによるシステム思考での挑戦:産業用ロボット(1/2 ページ)
立命館大学は2021年10月12日、プレスセミナーを開催し、立命館大学 理工学部 教授の川村貞夫氏が研究責任者を務め、SIP戦略的イノベーション創造プログラム「フィジカル空間デジタルデータ処理基盤」にも選ばれている「CPS構築のためのセンサリッチ柔軟エンドエフェクタシステム開発と実用化」プロジェクトについて紹介した。
立命館大学は2021年10月12日、プレスセミナーを開催し、立命館大学 理工学部 教授の川村貞夫氏が研究責任者を務め、SIP戦略的イノベーション創造プログラム「フィジカル空間デジタルデータ処理基盤」にも選ばれている「CPS構築のためのセンサリッチ柔軟エンドエフェクタシステム開発と実用化」プロジェクトについて紹介した。
自動化が難しい食品製造業でロボット活用を
日本の労働力不足が懸念される中、さまざまな領域で自動化の拡大が期待されている。しかし、実際には製造作業の中でも自動化が難しい領域も数多く残されている。こうした領域の1つが食品を取り扱う食品製造業などの領域だ。ロボットなどで食品をハンドリングするのは実は非常に難しいためだ。川村氏は「多様な形状、柔軟物、多様な環境、少量多品種の物体ハンドリングはロボットには非常に難しい。それにはさまざまな問題が混在しているが、われわれは『認識問題』『機構/制御問題』『実用化問題』の3つに切り分けて考えている」と語る。
例えば、認識問題を考えた場合、人は見ただけで対象物を短時間で理解し、重量や柔らかさ、摩擦、持つ場所などを把握するが「ロボットなどで実行できるように機械的に把握しようとすると、これは非常に難しい」(川村氏)。さらに、機構/制御問題で考えた場合でも、人は対象物の特性を考慮して短時間で運動計画を作り、運動を実行することが可能だがこれもロボットには難しいことだ。「要因として、重量や摩擦、変形など力学のモデルとデータ不足などの面がある他、実用化を考えた場合、システム構成が複雑で高価になりすぎるという課題がある」と川村氏は語る。
そこで「CPS構築のためのセンサリッチ柔軟エンドエフェクタシステム開発と実用化」プロジェクトでは、これらの課題を解決するために「認識問題」「機構/制御問題」「実用化問題」のそれぞれを個別に切り出して解決するのではなく、CPS(サイバーフィジカルシステム)をベースに、システム統合的問題解決アプローチにより、システムとしての最適化を目指す。材料やセンサー、アクチュエータ、機構、制御、画像処理、AI(人工知能)、IoT(モノのインターネット)システム、クラウド、ビジネス、ルール作りなどのさまざまな課題を解決し、システムとしての自動化が難しい食品製造分野などでのロボット普及が進むような技術パッケージや枠組み作りを推進する。
実施期間は2018〜2022年度で、推進主体は、立命館大学、山形大学、人機一体、チトセロボティクスの2大学と2企業となっている。その他でも明治大学、金沢大学、奈良先端大学院大学、関西大学、大阪工業大学、九州大学、i-RooBO Network Forumやその他の企業などがプロジェクトに参加している。「課題解決には、触覚を含めた複合センシングやこれらの情報のクラウドデータ処理、柔軟なエンドエフェクタ―、AI活用、センシングなどさまざまな技術が必要になる。
システム統合アプローチにより異分野の専門家が集まっているところが特徴だ」(川村氏)。
食品のモノとしての特性をデータベース化
プロジェクトでは、より簡単に食品領域でロボット活用を行うためのボトルネックとなる課題を解決するさまざまな技術を開発して示していくことを目指している。
例えば、認識の部分では、ハンドリングに必要な機械的接触、変形、摩擦などの情報を取得し、こうしたセンサー情報を簡単にクラウドへつなぐことができる仕組みが必要になるが、これらデータのハブとなるようなエッジコンピューティング端末などの開発も推進。「こうしたデバイスは既にあるようにも思うが『簡単に』できるかどうかがハードルで、そこを埋める必要がある」と川村氏は述べている。
また、食品の「モノ」としての特徴は、データ化やモデル化されておらず、こうしたデータベース化なども必要だ。食器や食品、農林水産物の形状、重量、粘弾性、摩擦特性などを独自開発の計測機器などを活用し、データベース作成を進めているという。その他、AIによる画像認識と対象物データベースを組み合わせて判断できるような統合認識システムの開発なども行っているという。
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